松田奈緒子/重版出来!(5)
普段何気なく手に取る本や漫画。
そこにどれほ多くの人の手がかかり、
各分野の人たちの技術や才能が結集しているか、
僕たちは知らない。
コンテンツの内容を左右するのは、
作家さんだけではない。
表紙やデザイン、紙の感触や重さ。
ありとあらゆるものが検討され、精査されている。
だから僕たちは五感を使って物語を味わい、
その世界に浸ることができる。
コストといかに折り合いをつけるか、
という観点もある。
ビジネスとして成り立たねば、続いていかない。
良いものがすなわち売れるものとは限らない。
求める人たちに対し、それを気づかせ、
手に取らせる仕掛けも必要となる。
様々な要素が寄り集まり、僕たちは作品と出会う。
一人の天才がその才を持って、
すべてを生み出すこともある。
大規模な資本や仕掛けが、
一気に成し遂げてしまうこともある。
でも多くの場合、
各人たちがそれぞれの持ち場持ち場で、
少しずつ積み重ねることによって実現される。
それはある種の奇跡なのかもしれない。
少しずつの異能が、豊かな物語を作り出している。
そのことを忘れず知っていたいと思う。