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高橋ツトム/JUMBO MAX(5)

久しく離れていて戻った際、
すんなり戻れる物語ももあれば、
なかなかその世界観に浸れないこともある。
どちらが優れているとは、簡単には言えない。
自分の暮らす世界と親和性が高ければ、
比較的すぐにその世界に入っていきやすい。
一方、自分の住む世界からかけ離れるほど、
その距離の分、飛び込む時間が必要だ。

正直にいって、久々にこの物語を読み、
その世界に入り込むまで時間がかかった。
登場人物たちの心に共感するのに苦心した。
彼らがたどり着いた地平は、
一般人の生活からはみると、
行き着くところまで行った感がある。
彼らも元々、
平凡な一市民に過ぎなかったはずなのに、
たまたま作り上げたED薬によって、
その日々は一変する。

欲望と情念が渦巻き、
それぞれの襞と襞が絡みあい、
それは静かで激しい戦いだ。
誰と誰が味方で、誰と誰が敵同士か、
絡み過ぎた糸はもう解きほぐすことはできない。
その絡みあった糸に違和感を覚えながら、
読み進めていくと、やがて知らぬうち、
その世界の住人になっている自分に気づく。
距離はなくなり心も体も絡みとられる。

さあ、どうやって逃げ出そうか。
逃げ出せるだろうか。

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