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横関大/罪の因果性

大どんでん返し。
横関大さんの小説を読むときには、
それを念頭にいれておく必要がある。
来るぞ来るぞと分かっていても騙される。
騙された!と思ったら、もうひと返しある。
ひっくり返されて、
もう一回ひっくり返されるんだ。
もうどっちが天で、どっちが地だか、
分からなくなる「ゆらぎ」の快感だ。

さて今回のテーマは因果。
ある事件が起きる。
その事件に巻き込まれ罪を被る人がいる。
その事件のせいで被害を受ける人が出る。
その事件によって命を失われる者。
表の事情と裏の事情。
なぜ罪を被り、被害を受け、
殺められなければならなかったのか。
裏に隠されていた真の因果は何か。

表の事件をなぞる中で、
裏の事件の仕掛けが、罠が静かに張り巡らされ、
表の事件を知るとともに、
裏の真実にひっくり返される。
そしてやはりもう一度、ひっくり返される。
最初はそんなこともあるかもね、
と読み飛ばしたけれど、
今になってその意味に慄く。
因果をテーマにしながら、
因果の不条理をも描く。
因果の外で因果を受ける者の悲劇。
やられた。

コロナ禍の時代を描く小説でもある。
地下が持つなんとなく息苦しい感じを、
今の時代になぞらえる。
確かに確実に何かが失われ、
何かを我慢している、耐えている感がある。
どこか息苦しさが漂う。
水の中潜っているような。

いつか水面に出る日を待とう。

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