こざき亜衣/あさひなぐ(25)
今、甲子園では高校野球が行われている。
高校野球は、汗と努力・青春の魅力に溢れている。
真夏のさなか負けたら終わりのトーナメント、
失われる時の物語だ。
仲間たちと過ごす最後の夏、友情の物語でもある。
人々はそのドラマに心打たれる。
それは見る者にとっても、プレイする者にとっても、
壮大な青春劇といえる。
本巻では、
ひとつのアンチテーゼが投げかけられる。
まずは合宿中、
面・銅・小手・脛といった技の掛け声以外、
言葉を交わしたり発することが禁じられる。
仲間との連携は奪われ、
各メンバーは独り独りに分離される。
否が応でも自分と向き合うことを求められる。
表層ではなく、
その奥底にあるものを突きつけられる。
本質と対面する。
武道は部活であるべきではない、
といった言葉も登場する。
武道は道であり、
人生をかけて寄り添っていくものだと。
部活のように刹那に区切られ、
仲間とともに過ごすものではないと。
日本人は時の終わりに敏感な種族なのかもしれない。
終わりがあるからこそ、
そこに美しさや切なさ、儚さを見い出す。
それに対し道はある種、したたかだ。
長い時間をかけた、
終わりのない取り組みといえる。
刹那を永遠に閉じ込める。
そんな企みともいえる。