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原宏一/佳代のキッチン ラストツアー

この国を造ってきたのは、
その時々の為政者たちだろう。
彼ら彼女たちが目指したものが、
僕らが知らぬうちに、
あるいは誰もが知る通り、
この国のあちらこちらに反映されている。
富を蓄え、力を持ち、人々を従え、
溢れんばかりのものを得て、
おそらく権力の座に座る。
原始に遡るほど、その傾向が強いのではないか。
ひょっとしたら現代においても。

そうした人たちにとって、
権力は守るものであり、
時代は維持するものかもしれない。
もちろん世が良くなることを望んではいるだろう。
一方で心のどこか、
世の中の理屈が変わらないことを
願う部分もあるのではないか。
時代の流れをせき止めてしまう
ボトルネックになる、
そうした一面もあるだろう。

軽やかに世の中を変えるのは、
守るものを持たない者だ。
自由を縛る「作られた常識」に
囚われることなく、
心の声にまっすぐ向き合って
目の前の喜びに誠実に生きる。
彼らの行動は大きな影響力を持つわけではない。
半径5メートルのささやかなものに過ぎない。
そうした小さな行動が、世界を壊していく。
風穴を空け、蟻の穴を空け、
ある日、ぽっかり大穴となる。
佳代の生き方は、いろいろ考えさせられる。

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