今井雅之/THE WINDS OF GOD ―零のかなたへ―
戦争を知らない世代。
という言葉自体が遠く感じられるほど、
年々、戦争から意識が離れていくように思う。
もちろんウクライナでは今も戦争が起きているし、
世界各地で紛争が絶えることがない。
少なからず生活にも影響が出てもいる。
それでも自分のことではなく、
どこか他人事、
自分とは無関係だと感じているように思う。
けれど僕らが歩くこの町で、
確かに戦争はあったのだ。
少し意識して見回せば町のあちこちに、
少したどれば意外にも幾人もの人が、
戦争の大きな爪痕をその身に潜めている。
僕らは普段、見たいものしか見ない。
見るべきものを見過ごして生きる。
でも少しだけ目を凝らしてみれば、
それはどこかしこに転がっている。
映画「ウィンズ・オブ・ゴッド」を観たのは、
もう30年近く前のこと。
売れることを目指すダメ漫才師の二人が、
1920年の8月のタイムスリップし、
特攻隊員になってしまう内容だ。
戦争時代の人たちというと、
今と考え方や生活にはるかな違いがあると思いきや、
そこにあるのは地続きの感覚だ。
愛する人を想い、夏の暑さに汗を流し、
一日一日を必死に生きる。
ただ違うのはそこに戦争があること。
戦争が問答無用で人の命を奪っていくこと。
ずっと読みたいと思っていた小説版を、
やっと読むことができた。
2022年8月、僕らはあの夏の延長線上を生きている。
あの夏があったからこそと、今年の夏がある。
大切なものが何か、見失わず生きたい。