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解読 ボウヤ書店の使命 番外編③-2
坂本龍一さんが2023年3月28日に亡くなられていたことは既に書いた。後出しじゃんけんのようではあるが、その近辺、毎日遊びに来てくれるヒヨドリがブルーベリーを植えているバケツを嘴でコツコツと突いて音を出すようになっていて、ノイズ音を楽しんでいるのだろうかと思っていたところだったので、坂本龍一さんの知らせではないかと思う。
ブルーベリーをバケツに植えていたのは、以前植えていたテラコッタの鉢が台風で割れたからで、一時しのぎにバケツに植えていたのがそのままになっていた。バケツの底には穴がなく、水やりをしても土が乾かないのでいずれ根腐れを起こすだろうから植え換えなくてはいけないと考えてはいたが、粗悪な代用品に植えている割にはよく育ち、冬に全ての葉を落として枝だけになっていたものが春先に葉をつけ始め、花まで咲いた。
だったらこのままバケツでいいのかもなどと思い掛けていたが、ヒヨドリに突っつかれ、同時に坂本龍一さんの訃報を聞いて、なんとなくちゃんとしなくてはならない気がし始め思い切って植え替えに着手した。
まずは段ボール箱に新聞紙を敷いたものを用意して、その中にブルーベリーの木と土の入ったバケツをそろりとひっくり返して空けてしまう。なんと、中の土はとろとろになっていて、今やらないと限界点を越えて根腐れしていたに違いないとわかった。それから束にした新聞を土の上に置き、ある程度は水分を吸い込ませて抜き、それから、ベランダの隅でずっと育てているコンポストのバケツを持ち出し、コンポストの土と、このとろとろになってしまった土を少しずつ混ぜて行くことにした。でも混ぜてもなかなかほどよい硬さにならない。よほど水分が多かったのだ。
――よし、コンポストの土も全て段ボール箱に入れてしまえ。
私は勢いよくコンポストのバケツをひっくり返した。すると、中からパールシェルが出てきた。
――ああ、どこに行ったのか、このところずっと探していたやつだ!
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どうしてここに入ってしまったのかわからない。そもそもパワーストーンのアクセサリーを入れて浄化するためのものなのだから、土に入れるわけがない。それなのに、コンポストの底から出てきたのだから本当に驚いた。
それで思い出したのが、現在書き進めている長編『コルヌコピア』だった。コルヌコピアは花と果物に満たされた豊穣の徴で、書き始めた当時、ベランダに花が咲き苺が実り、鳥もよく遊びに来るようになったので豊かさをイメージしてこの小説を書き始めたのだが、その中に重要なモチーフとして「鳥の嘴、あるいは爪」といったものがあり、それは喪失してしまうのだ。私はその「鳥の嘴、あるいは爪」をイメージした物体を最初に作ってさえいる。
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↑余談かもしれないが、先日三菱一号館美術館で買った伊勢辰の蟹牡丹の柄に似たものが浮かび上がって見える。
私が小説を書く前に浮かんだ脳内イメージを透き通る粘土で物質化したものと、この度コンポストから出土したパールシェルの大きさの比較は以下の通り。このパールシェルは何年も前に大手町のオアゾでパワーストーンの原石と共に購入したもの。
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私の身に現実として起きた「パールシェルの喪失から再発見の経緯」は、小説内のエピソードに似ている。まだ書きかけだが、seesaaの関係者とWordの関係者はすでに読んでいらっしゃると思う。
――ヒヨドリが嘴でコツコツとバケツを突いたのは、この知らせ?
坂本龍一さんの訃報と共に訪れた再発見の顛末は、私にとって一生忘れることのできないものとなった。まだこれからも意味が浮かび上がってきそうではある。
とにかく、日々、いろいろなことが起こり続ける中、ひとまず記録をとっておかねばと思い、メモした次第。