R6 予備試験再現答案 労働法
予備試験 再現答案 労働法
設問1
1 X組合は、労働委員会に対し、支配介入(労働組合法(以下略)7条3号)に当たることを理由に、会議室の使用を拒否する取り扱いの中止命令及びポスト・ノーティス命令を求める不当労働行為救済申立てをすることができると考えられるが、かかる申立ては認められるか。
(1) Yによる会議室の使用を拒否することが「支配…介入」に当たるか。
ア 使用者は、企業施設管理権を有しているから、施設を使用させるかについて広範な裁量を有する。よって、施設の利用拒否は原則として「支配…介入」に当たらない。もっとも、利用拒否が権利の濫用(民法1条3項)に当たる場合には、「支配…介入」に当たる。
イ 本件において、たしかに、X組合は教頭に口頭で告知すれば、会議室の使用を認められる取り扱いが行われていたため、従前の取り扱いを改めて会議室の利用を拒むことはX組合に不利益となる。また、X組合は当時、Yとの間で団体交渉を行っており、対立した状態にあったこと、使用の申し出をした時点では会議室の使用を予定した者はいなかったことからすると、Yが嫌がらせ目的でX組合の会議室の利用を拒んだとも思える。しかし、従前の取り扱いを変更した理由は、X組合だけが事実上自由に会議室を利用できるようになっていること不公平であること、X組合に所属していない教職員の方が多いことから一層問題であるとの認識を持った点にある。労働者が不公平感を感じれば、使用者に対する不信感が生じ、職務遂行にも影響がでかねないことから、かかる理由は不合理なものとはいえない。また、取り扱いを変えるように命じたAは、新たに学校長に就任した者であるから、X組合を嫌悪する動機はないと考えられ、X組合の利用を拒んだのは、X組合に対する嫌がらせ目的であったともいえない。従前の取り扱いというのも、事実上認められていただけであり、その変更によるX組合の不利益も大きいとはいえない。加えて、本件規定による会議室の利用方法は、学校長宛に許可申請書を提出するのみであり、負担も小さい。X組合が会議室を利用できなかったのは、X組合が一行に上記の通り負担の小さい書面による許可申請を提出しなかったことも起因しており、X組合の落ち度もあるといえる。
ウ したがって、権利の濫用とはいえず「支配…介入」に当たらない。
(2) 上記からすると、反組合意図も認められない。なお、支配介入が偶然成立することは妥当でないから、支配介入意思が必要となる。
2 以上より、X組合の申立ては認められない。
設問2
1 戒告処分は懲戒権の濫用(労働契約法(以下、「労契法」という)15条)に当たり、無効とならないか。
(1) 「懲戒することができる場合」として、まず「合理的」「周知」(労契法7条)の要件を満たし、労働契約の内容になっている必要がある。また、懲戒の刑罰類似性から、懲戒の種別及び事由が規定されていることも必要である。
Yの就業規則において、40条で弁明の機会を与えるとして、労働者の権利に配慮しているから、その内容は「合理的」といえる。また、就業規則として定められているから「周知」もあるといえる。就業規則39条1項柱書に種別を定めている。また、同条各号に懲戒事由を定めている。よって、上記の要件を満たす。
(2) では、Zのビラ配布は「許可なく…学校施設内において…印刷物の貼付、配布等をしたとき」(就業規則39条5項)の懲戒事由に当たるか。
ア 労働者は職務専念義務を負う。よって、ビラ配布は外で行うべきであるのが原則である。もっとも、職務専念義務と両立し、使用者の業務を害する具体的なおそれのない場合には、懲戒事由に当たらないと限定解釈すべきである。
イ たしかに、Zのビラ配布は職員室内で行われている。しかし、当該ビラは、片面印刷のA4サイズ1枚の紙であり、圧力的でないものである。時間も昼休みに行っており、職員の業務に支障が生じない時間である。また、職員室に訪れている生徒等がいないことを確認した上で配布しており、業務に支障が生じないよう配慮している。配布の態様も、内容を伝えた上で手渡ししていること、離席している職員に対しては、裏返しにして置いていることから、平穏に行っているといえる。さらに、ビラ配布の時間は10分ほどであり、昼休みの終了までに配布は終了しているから、実際に業務に支障が生じることもなかったといえる。
ウ よって、Zのビラ配布は職務専念義務と両立し、使用者の業務を阻害する具体的なおそれはないといえるため、懲戒事由には当たらない。
(3) したがって、「懲戒をすることができる場合」に当たらない。
2 以上より、戒告処分は無効である。
自己評価 C