R6 予備試験再現答案 民事訴訟法

予備試験 再現答案 民事訴訟法

設問1
1     裁判所は相殺の抗弁が時機に後れた攻撃防御方法(157条1項)に当たるとして却下すべきでないか。
(1)     「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」とは、抗弁等の性質上、より早期に提出することが期待できるものであったか否かで判断する。具体的には、抗弁の性質、審理の成熟度、当事者の主張が期待できるか等を考慮して判断する。
本件において、確かに相殺の抗弁は自己の債権を犠牲にし、相殺の抗弁について審理されると既判力(114条2項)が生じるため、主張した者に不利益となるから、初めから主張することが期待できない性質を有する。また、判例も、相殺の抗弁は、訴訟物と異なる債権を主張するものであり、訴訟物に内在する瑕疵とはいえないこと、相手方の請求が認められることを前提に主張するものであり、基準時前の提出が期待できないことを理由に、基準時後の相殺権の行使を認めていると考えられる。しかし、本件訴訟は弁論準備手続(168条)に付されている。そして、L2が主張する自働債権の弁済期は本件訴訟の提起前に既に到来しており、相殺の期待が生じている。そのため、弁論準備手続による争点整理の過程から、L2が敗訴する可能性も想定でき、その時点で相殺の抗弁を主張することも期待できるといえ、判例とは場面が異なる。また、L2が主張した時点は、人証調べも終結し、結審が予定されていた口頭弁論期日であり、遅くとも人証調べまでに主張可能であるといえる。加えて、L2は弁護士であり、相殺の抗弁を主張することが困難であったともいえない。
以上より、よる早期に主張が期待でき、「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」に当たる。
(2)     「故意又は重大な過失」は、弁論準備手続に付されているか否か、当事者が弁護士であるか等を考慮して判断する。
 本件において、L2の主張は弁論準備手続終結後のものであるから、説明義務(174条、167条)が生じる。しかし、L1が本件訴訟の開始前から相殺適状であり、仮定的抗弁として主張できたのにしなかった理由の説明を求めても、相殺の抗弁が初めから主張できるものではないという説明に終始し、それ以上の具体的な説明はされていない。よって、L2は説明義務に違反している。そして、説明義務に違反している場合、特段の事情のない限り、重過失が強く推認される。また、L2は弁護士であり、専門家であるから仮定的抗弁として主張することが可能な地位にあり、初めから主張はできなかったとしても弁論準備手続期日の中で仮定的抗弁として主張することはできる。
以上より、「故意又は重大な過失」があるといえる。
(3)     「訴訟の完結を遅延させることとなる」に当たるかは、却下した場合の訴訟の終了時点と却下せずに審理した場合の訴訟の終了時点をもって判断する。
 本件訴訟は、人証調べを終わり、結審が予定されていた口頭弁論期日の時点まで至っており、相殺の抗弁を却下した場合、すぐに訴訟は終了すると考えられる。他方、相殺の抗弁を却下せずに、審理すると、別個の債権を審理することになるから、新たな証拠調べを要する等訴訟資料が流用できず、訴訟の完結は大幅に遅れると考えられる。よって、却下した場合と却下せずにした場合の訴訟終了時点は大幅なずれが生じるといえる。
したがって、「訴訟の完結を遅延させることとなる」に当たる。
2     以上より、裁判所は相殺の抗弁を却下すべきである。
設問2
1     Aは補助参加の利益を有しているから「参加することができる第三者」(53条1項)に当たる。しかし、Aは訴訟告知を受けても参加していないから、参加することができた時に参加したものとみなされる(同条4項)。そうだとすると、Aに「効力」(46条柱書)が生じ、Aの主張が排斥されることにならないか、「効力」の意味が問題となる。
(1)     46条柱書の趣旨は、敗訴責任の公平な分担にある。そして、補助参加人は、判決主文の判断のみならず、理由中の判断について争うのが通常であるから、「効力」とは、判決主文の判断のみならず理由中の判断にも生じる参加的効力である。もっとも、理由中の判断は、判決主文の判断を導くための主要事実の認定又は法律判断についてのみ効力が生じる。また、主観的範囲としては、上記趣旨から、敗訴当事者に生じる。
(2)      本件において、前訴の訴訟物は、XのYに対する売買契約に基づく売買代金支払請求権であるところ、AにとってはXが勝訴する方が自己の無権代理人の責任を免れることが可能になるから有利である。そのため、AとXは利害関係が共通するものである。そして、前訴判決は、Xの請求棄却判決であり、AとXが敗訴当事者にあたり、主観的範囲は問題がない。
 また、本件訴訟の請求原因として、①XA売買②Aの顕名③Yによる①に先立つ①についての代理権授与を主張する必要があり、前訴判決は③AがYから代理権を授与されていなかったことを理由中で判断しており、この部分に参加的効力が生じることになる。しかし、後訴におけるAの主張はAがYから代理権を授与されていたというものであり、参加的効力に反する。
2     以上より、Aの主張は、参加的効力により排斥される。

自己評価 B(希望)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?