R6 予備試験再現答案 民法

予備試験 再現答案 民法

設問2(1)(設問1は設問2の後に記載する)
1     GのJに対する500万円の不当利得返還請求(703条)は認められるか。
(1)     Jは500万円の「利益を受け」たといえる。
(2)     Gには500万円の「損失」がある。
(3)     「そのために」は、社会通念上の因果関係があるかで判断する。
本件において、たしかに、GはI 銀行に振込依頼をし、K銀行のJ名義口座に500万円が振り込まれており、銀行が介在している。しかし、銀行からのJの口座に振り込まれた時点で、500万円はJの支配下にあるといえ、Jは500万円を取得したといえる。よって、利得と損失の因果関係があるといえ、「そのために」に当たる。
(4)     703条の趣旨は、正義、公平にある。よって、「法律上の原因なく」とは、形式的に正当視される財産移転であっても、正義・公平の観点から、実質的・相対的に正当視できない財産移転をいうと解する。
本件において、たしかに、JはK銀行に対し、自己の口座の預金債権を有しているから、500万円の取得は当該債権に基づくものであり、正当な取得といえるように思える。しかし、誤振込があった場合には、その申し出があると銀行実務では組戻しの手続きが行われている。にもかかわらず、GはK銀行から組戻しの連絡があってもすぐには応じず、その後問い合わせにも応じていない。銀行実務で組み戻しが行われている以上、早急に対応すべきであり、それを怠ったGには本件誤振込を認識しつつ、自己の利益にしようとする不当な考えがあったといえる。また、JはG及びHとは何ら関係のない人物であり、Jは何らの対価もなく500万円を受けている。
よって、Gの500万円の取得は、実質的、相対的には正当視できない財産移転といえ、「法律上の原因なく」に当たる。
2     以上より、Gの請求は認められる。
設問2(2)
1     GのLに対する500万円の不当利得返還請求は認められるか。
(1)     Lは500万円を利得したといえる。
(2)     Gには、500万円の損失がある。
(3)     因果関係は上記の通り、社会通念上の因果関係があれば足りる。
たしかに、Lの利得はJの一般財産からの弁済であるから、直接の因果関係はない。しかし、Jの口座は数年間残高0円であり、弁済にあてた500万円は誤振込によるものであると考えられる。よって、利得と損失に社会通念上の因果関係があるといえ、因果関係は認められる。
(4)     法律上の原因なくとは、上記の通り判断する。そして、騙取金の事案では、相手方が、騙取金であることについて悪意、重過失の場合には、実質的に正当視できない財産移転にあたる。
本件では、たしかに、Lの利得はJに対する債権の弁済であり、形式的には正当視できる財産移転である。しかし、LはJから500万円が誤振込によるものであると説明されており、500万円が本件誤振込によることに悪意であったといえる。また、悪意がなくとも、500万円という大金を突然弁済しに来た場合、何らかの犯罪によって得た金であるかを怪しみ、受け取るべきではなかった。しかし、LはJに説明を求めることもなく、迷いつつも受け取っており、重過失が認められる。よって、Lの利得は実質的に正当視できない。
したがって、「法律上の利益なく」にあたる。
2     以上より、Gの請求は認められる。
(設問2(2)の1(3)に以下の記述を挿入)また、たしかに、K銀行は誤振込の後、Jの口座の一時停止の措置を採っていなかったから、Kの過失が介在している。しかし、銀行実務では組み戻しがされ、受取人はそれに承諾するのが通常であるから、Kの落ち度は小さく、因果関係に影響しない。
設問1(1)
1     CのDに対する所有権に基づく乙土地明渡請求は認められるか。
(1)     もっとも、Bは相続人の欠格事由があり、Dは所有権を取得したとはいえないのではないか。「偽造」(891条5号)に主観的な要素が必要か問題になる。
ア     891条の趣旨は、相続の利益を得ることが相当でない行為をした者に対する制裁にある。よって、「偽造」とは、主観的な悪意まで必要である。
イ     Bは書類を偽造した後、すぐにDに乙土地を2000万円で売っているから、相続人のために行った行為ではなく、自らの利益を得るために行った行為といえる。よって、Bは悪意をもって偽造したといえ、「偽造」に当たる。
(2)     以上より、Cの請求は認められる。

自己評価 F

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