MT理論
真の男の価値を決めるものは何であろうか。考え続けて23年, 私は一つの答えにたどり着いた。ーそう, 筋肉である。
今まで私は, なぜ世の中の人間は筋トレをするのか, 疑問に感じていた。使いどころのない筋肉をつけ, いったいどこに向かおうというのか。その筋肉にかけるエネルギーをもっと他の何かに生かすべきではないのか?しかし, 自身がやってもないことを否定するのもちゃんちゃらおかしい話であるので, 緊急事態宣言で外出するのも憚られるこのご時世, 試しに筋トレに臨んでみることにした.
私が行ったのは, 腹筋ローラーである.研究室の先輩の忘れ形見を何の気なしに持ち帰り, 家で埃かぶったものである.初日は腹筋ローラーを10×2セット行っただけだったが,,, これがなんとも楽しい.というより, 達成感が半端ない.という事で今回は自分なりに考えた筋トレのメリットについて書き残しておくことにした.
①ポジティブになれる
「筋トレをすると幸せになれる」, そんな言葉を聞いたことはないだろうか.なんでも筋トレをすることで脳内に幸せホルモンが形成されるらしい.私もかれこれ1週間筋トレを近く行っているが, かなり気分がいい状態である.修論という理系院生最後の砦の陥落に立ち向かっている今日でも動揺しないくらいの気持ちであることから, これこそ筋トレの力だと私は確信している.筋トレは外面だけでなく, 逆境に立ち向かうための内面も鍛えてくれるとは.筋トレを司る筋肉神がいるのなら, 今すぐ崇め奉り敬虔な信徒となっていよう.
②筋トレこそ暖かい
2021年1月, 今年も例年と変わらず寒い日が続いている.こんな日は友達と集まり鍋でもつつきたい気持ちになるが, コロナでそうもいかない.そんなときこそ筋トレである.筋トレをした後, 体はかなり温まる.それはもう, 今すぐ発火してしまうのではないかというくらいである.このエネルギーはどこから出ているのか未知の領域であるが, このまま続けていたら私の温度で地球温暖化を促進してしまうのではないか, と申し訳ない気持ちになること請け合いである.冬の定番は鍋で温まる,炬燵で温まる, そういう固定観念に縛られている者も, 一度筋トレをすれば「冬の新定番は筋トレだ!」と叫びだす姿を想像するに難くない.
③わが子を見守る気持ち
子供を育てる親の楽しみは何であろうか.私は親ではないので正解は分からないが, きっと「子供の成長する姿をそばで見守る」ことだと思う.その心は筋トレにも当てはまる.ー鍛えるほど成長し磨かれる筋肉ーそれを想像するだけで楽しみは尽きないものだろうか.筋トレをすることで父性も芽生える.なんとも素晴らしい.10年後の自分よ, 貴方は今も筋肉を愛していますか?筋肉君, 貴方はたくましく成長していますか?ーそんな手紙をタイムカプセルに書いて庭に埋めておきたいくらいの将来の楽しみである.
④男らしさが生まれる
筋トレをすることの一番の楽しみ, それは男らしさが上がることである.私は幼少期「ベスト・キッド」という映画が好きだった.そこに出てくる「ミスター・ミヤギ」は空手マスターであり, 達観した姿で弟子を守る「ミスター筋肉」ともいえる存在であった.だれかを守るにはそれなりの力が必要, そんな優しい力をもった人間こそ真の男らしさーそんなメッセージを勝手に感じていた.筋トレはそのための力をつける手段であると言える.誰かががれきに挟まってしまい救ってやりたいとき, ヤンキーにいじめられている子供がいるとき, 力がなければ救う事はできないだろう.そのための力をつけることこそ筋トレの神髄である.また, 筋トレは恋愛成就にもつながるのではないか.動物の本能を考えると「力あるものを好む」, このことは自明であり, これは動物の一種である人間にも当てはまる.MARBEL作品などで見る, 白い歯を光らせながらムキムキな姿で市民を守るスーパーマンーその姿を見て惚れない女性はいないだろう.そこで私は, 筋肉あるものこそ女性を惹く,「MT (Muscle Tokimeki)理論」を提唱したい.ありがちなケースであるが, 女性が重い荷物を運んでおり, 辛そうにしている場面に直面したとする.これもありがちだが, 代わりに男性が荷物を持ち, 女性と親密な関係になるーこのケースでもいいが, MT理論はその先を行く.女性も荷物も両脇に抱えてやるのだ.こうすることで「こんな力もちでいらっしゃるなんて, 男らしい!」と目を輝かせてくれる, そんなイメージを想像するに難くない.
私も一介の理系大学院生, 論には証拠がないと誰も納得してくれないことは学び済みだ.そこで, この筋トレにより確かな力を身に付け, MT理論の完成を目指したいと思う.完成した暁にはMT理論を論文にまとめ, NATUREにでも出稿してみるつもりだ.そうなったら最後, 世界中の人々が驚き, ノーベル賞なみの実績として称えられてしまうであろう.いつ声がかかってもいいよう高級なスーツを注文しておかねば.