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言葉の勉強🙆‍♀️「推し」の語源について


言語学者・辞書編纂者の故金田一春彦氏は、初めて見る新語や、新しい用法を日常で発見するとメモに書き留めていたという。
言葉を生きて変化するものとしてとらえられていたのだ。

今日でも、そういうことを厳密にしている人がいるだろうか。

「性癖」という言葉は、現代では「セックスの癖・嗜好」という意味で使われている。これはせいぜいこの10年、20年くらいの新しい用法である。
もともとは「性格の癖」という意味しかない。
僕には最初たいへん奇異であった。
金田一先生が生きていたらメモされたに違いない。
そのようにメモを積み重ねて、定着してゆるがないと判断したときに、辞書の意味に書き加えるのである。

さて、これは「推し」という言葉がいつから使われたのかという話のマクラである。
いつから「推し」という言葉があったか。ざっと検索すると、モーニング娘。説とAKB48説がある。

モーニング娘。のほうが古そうであるから、これが起源といえるかもしれない。

しかし、僕はこのケッタイな言葉が爆発的に普及したのは、AKB商法以降ではないかと感じている。

握手会のために同じCDを何枚も何十枚も買う。
当時、僕はそんなふうに金を使わせるのは反則だと思った。
金を使うほうもバカ者で、いいカモだと思っていた。
それが世の中の一般的な感じ方だったと思う。

しかし、カモという言葉や認識は屈辱的である。
そこに「推し」という言葉の爆発的な普及要素があった。

つまり、カモは「騙されている」。
しかし、「推し」となれば「主体的」になれる。

ホストに貢ぐ女がいる。
昔は「騙されているからやめなさい」と言われたものだ。
しかし、当人だってそんなことは半分以上はわかっているのだ。
全部はわかりたくないけど。
自分が好きで貢いでいるものがなぜ悪い?
そう開き直られるとかける言葉がない。

「騙されている」のではなくて、「推し」ているのだからね。

そういう流れでホストという薄暗い職業も堂々とテレビに出てくるようになった。

この時代の流れはロクなものではないが、その時代に生きている者の大部分には、その選択肢しか見えないだろう。
その真っ只中にいるわけだから、ジジイに「それは悪い」と言われても他の世界は見えないし、なにが悪いかわからない。

良い悪いの話ではなく、時代という大河の中の言葉の変遷の話にしておこう。

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