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大人と子供の間、若者の葛藤

あなたは20歳の秋を思い出せるだろうか。

 私は20歳の秋、大学を中退する決意をし、翌春からの進路を模索していた。学生という身分を自ら手放し大人を選び取ることへの不安と期待の綱引きで、心はだいぶ磨耗していたように思う。
 それから数年が経ち、勤めていた会社を辞め2018年3月からほんの数週間前までニートをしていた。あまり気持ちにも時間にもお金にも余白のない生き方をしていた私は、自由な時間の中に人生の整理と遊びを求めて1年とっぷりと休んでみた。
 大学中退、ニート、という(私にとっては)有意義だった余暇を過ごした人間にぴったりなゲームを友人が紹介してくれた。

 「ナイト・イン・ザ・ウッズ」というゲームで、大学を中退したネコのメイちゃんが未来のない閉鎖的な田舎町に戻るところから物語が始まる。両親や旧友、町の人々と交流をする中で、奇妙な事件に巻き込まれてしまう。昨日からプレイをはじめたので、つらつらと、ゲームの記録をつけるためにnoteを投稿していこうと思う。

(そして、恥ずかしながら配信なんかも始めてしまったので、よければ実際にゲーム画面も覗いてみて欲しい。)


ナイト・イン・ザ・ウッズ Part1 HOME AGAIN

 どうやって感想を書いていこうか悩んだけれど、「関係」に着目してまとめていこうと思う。主人公メイの自分自身との関係。両親、親友、友人、町の人々、社会。パートごとに気になった関係性をピックアップしていきます。その他ストーリーは最後の方にざざっと。


1.メイちゃんと町という社会

 町を歩くと、高校生からは「大人」小学生からは「おばちゃん」と呼ばれる20歳のメイ。ビールを買えるようになるのは21歳からで、仕組みや町の人々からは「子供」扱いをされている。大人と子供の間にいる若者なのだ。
 警察官のおばさんにこんなことを言われる。

「私はメイちゃんみたいな、若く青く純粋な人たちに、ああいうもの(※)を見せないために働いている。町の中、線路の向こう、丘の上=ここ=世の中では色んなことが起きる。気をつけて、起こったことは取り返しがつかないし、災いは急に起こるものなのよ。」

※ day1で見つけた、道端に落ちた人の片腕。謎の刺青がある。

純粋ではない社会に幼く純粋な君は生きているのだ、と言われメイは反論する。「大丈夫だ」と。メイちゃんは自分が大人ではないが、子供でもないことをわかっている。何もない町にさえ守られている現状から、どうにか自立しようともがいているのだ。大人ってなんだ?

2.メイちゃんとメイちゃん

 メイちゃんは子供の頃周囲からチビだとバカにされていたようだ。
day3でパーティに出かける前、鏡で身だしなみチェックをする。そこには子供の頃と何も変わらない背丈の自分がいる。

「ブスだし丸々太って引きこもって、誰かゴミの日に出してくれよ。でも幸せは自分で作るもんだ、幸せ製造機で。」

 パーティ会場に到着すると大嫌いなビールが迎えてくれる。お酒に弱いメイちゃんは3杯でベロベロに。

「私がダメ人間になっちゃってんのはあたしのせいなんかじゃない!これは一人の女として自己主張だ!イケメンも可愛いも最悪だ!大学なんてクソくらえ!こんな町に生まれたあたしたちは最初からダメだったんだよ!
 でも他に行くところなんてない。帰ってきたけど、寝ることと独りで泣くことしかできない。だってそれくらいしかやることない。」 

 何もない町を出て、何かがあるであろう外に出たものの、結局自分は何もないまま地元に戻ってきてしまった、と思っているようだ。どこに行ってもだめ、自分が変わらなきゃだめ、でもこんなところにこんな私で産んでほしいなんて言ったことない、私のせいじゃない!わかる、わかるぞ。
 中学まで札幌に住んでいた私は、とても窮屈な世界にうんざりしていた。同調圧力が嫌いだし、見た目やノリの良さで決まるカーストも興味がなかった。私が私で楽しく過ごせる毎日にだけ集中したかった。でも、そうもいかない。道を外すと冷たい目で見られ、出る杭は打たれる。
 私は運良く高校から東京に出られた。都会は良くも悪くも他人に興味がない。息抜きも楽しみもビールや親友だけなんてことはなく、選択肢が山ほどある。

 20歳の私もメイちゃんと同じ若者だった。24歳の今は、大人だと自認している。物語を進めるうちに、自分がどんな変化を辿ったのか、そして何よりメイちゃんの行く末を楽しみたい。

今日はそんな感じで、ここまで〜!

▼以下は作中起こった出来事のあらすじ。

>day0
・深夜11時、アメリカのペンシルバニア州ポッサム・スプリングという故郷に帰ってくる。迎えは誰もいない。
・暗い家までの道のりを一人歩くメイちゃん。遠くには使われなくなった工場のガイコツ、聞こえてくる電車の音、足元を照らす真新しい街灯に「第一印象は良くなるよね。お別れの印象も良くなるかな。」
・帰宅するとパパが起きていた。「帰ってくるのは明日だと思ったよ。」「私のベッドは残ってる?ベッドも明日くる予定?」

>day1
・目覚めると部屋とメイちゃんを照らす茜色。そりゃニートだもんな、わかるわかる。
・キッチンにはママ。ママは残酷なサスペンス小説がお好き。平穏な毎日は退屈なのかな?「お母さんが心配するのはわかるよね?突然大学を辞めて帰ってくるなんて…」「その話、今度でいいかな?」
・親友グレッグが働く「スナック・ファルコン」へ。そのまま旧友たちとバンド練習。ワニのビーちゃんはあまりメイちゃんを歓迎していない様子?
・もう一人の旧友「ケイシー」が行方不明となっていることを知る。「きっと夜更けに電車に乗って、どこかに行ってしまったんだ。」
帰ろうか、と外に出ると、腕が道に落ちている?!?!ひし形の、謎の刺青。
・ビーちゃんに車で送ってもらう道中。お父さんのお店で働くビーちゃんへ「家業を継げるようにトレーニングを受けされられてるの?お父さんとお母さんに?」「…着いたよ。降りて。」途中で放られてしまう、なんだなんだ??
・家に帰るとやっぱり起きているパパ。帰郷のお出迎えをやり直し、「おかえり」「ただいま」

>day2
・今日もやっぱり起きると16時
・壊れたPCを直しに、親友グレッグの恋人アンガスを探すことに。ママはアンガスを知っている口ぶり。「ママはアンガスを知っているの?」「メイはホントにアンガスを知っているの?」ふ、深い。
・無事アンガスに修理してもらい、明日パーティに誘われる。

>day3
・パーティ前に警察官のおばさんから「あなたはまだ子供」と言われ反論する。そうだそうだ。子供じゃない。若者だ。
・パーティでは酔っ払い、元彼に会い、クダを巻く。「こんな町、クソだ!わたしたちもクソだ!」
・今日もビーに送ってもらう。高校時代に母を亡くしたビーに「お母さん元気?」と失言してしまい逆鱗に触れる。「昔は賢かった!楽しかったのに、どうしてそうなった?!何のために帰ってきたんだよ。大学は何だったんだよ。お前みたいなことができたらどんなに幸せか。大学なんか行かせてもらったら、死んじゃってもいい。」
・メイは泥酔状態で夢を見る。バッドで車を壊し、丘の上のオブジェをぶち壊す。どうしようもない全てへの発散しきれない怒りを感じた。

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