チャット小説の可能性

「チャット小説」というフォーマットから何か新しい工夫が生まれるかもしれないと思った。新しい形式が新しい内容を求めることもよくあるし、新しい内容が新しい形式を求めることもよくある。

PHPジュニアノベルの1冊である黒史郎著『未読のメッセージがあります』 イラスト:TAKA。仕掛けは複雑ではないが、既読や未読の関係が工夫されている。

それに対して、テラーノベルに掲載されているいくつかの作品を読んで、LINEなどでつながり、複数の人間との関わりを同時に意識しながら進行する作品展開が多いのに興味を感じた。現実の読者の環境をリアルに映している。

一対一の電話の延長にすぎないケータイ小説ではなく、複数の主体(キャラ)とつながるスマホチャット小説は、映画やラジオや電話の出現にモダニズムが応答し、やり損なってきたある部分を別な形で描いている。我々がモダニズム作品を読みやすいのはメディアの変容のインパクトがすでに死んだメタファーとなっているからだ。

この動きから、ひょっとして、孤高のモダニズム作家であり動詞の作家、Henry Greenが復権したりするのだろうか。主流ではなかった実験的作品を新しく読み直す契機が生まれているのかもしれない。メディア的変容のなかから、新しい表現形式の模索が生まれても不思議ではない。




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