アーレントと黒人問題
高橋哲哉が『記憶のエチカ』(1995)の第2章「《闇の奥》の記憶 ー アーレントと「人種」の幻影」で、扱った問題を考え抜く本の翻訳が8月に出るようだ。キャスリン・T・ガインズ 著『アーレントと黒人問題』(人文書院)。「アーレントはなぜアメリカでの黒人問題について差別的な発言・記述を繰り返したのか」とある。「
ただしガインズによるアーレント批判本は2014年の出版である。その後出た賛成反対の立場からの議論は、Roger Berkowitzによる "Reflections on Hannah Arendt's "Reflections on Little Rock""(2020), HA: The Journal of the Hannah Arendt Centerに整理されている。「リトルロック事件」に関して、アーレントが言及していると皆が思っている写真が、別の写真も含むという指摘は興味深かった。
高橋哲哉の『記憶のエチカ』と同じ1995年にAnne Nortonが"Heart of Darkness: Africa and African Americans in the Writings of Hannah Arendt."を書いていて、同時代的に批判していたことがわかる。これもちょっと興味深い。高橋はネルソン・マンデラを持ち出しているので、94年にマンデラが大統領となった南アフリカの情況が刺激になったのかもしれない。