富野由悠季著『映像の原則』

ある作品を見て、どうしてこんなに凡庸な映像になったのかと考えていて、富野由悠季監督の『映像の原則』を取り出してみた。チェックすると絵コンテがなっていないという根本がはっきりとした。そのため上滑りをしたのだろう。
低予算は低予算なりに、工夫すべきところがあったのに、大作並みの凡庸なカットではそりゃあ難しい。細部を迫力で押すこともできない。実にもったいない。
ちなみに映像のいろはを押さえてから映画などのコンテンツ批評をやらないと、けっこう間違えてしまう事が多いわけだが、そのあたり、いい加減な議論も多い。
***
富野著『映像の原則』を読んでいたら、タミヤ模型がミリタリーフィギュアを作製したときに、監修の大塚康生に「2コマ遅い」と叱られ、修正した話が出てきた。ああ、これはわからない人には永遠にわからないだろうなあ、という点だ。
劇場版の『AKIRA』を最初観たとき、動きがもたつく場面がけっこうあって、「ああ10箇所くらいカット尻を2コマか、4コマ切ったらいい作品になったのにな」と思ったことがある。悪い作品ではないが、今も感想は変わらない。2コマが12分の1秒だから、全編でせいぜい一秒くらい短くなるだけなのだが、別物になるはず。これは実際にフィルムとかいじったりつなげることをやってみないとわからない。残像効果を計算し利用できるかどうかなのだ。大友は漫画家なので、アニメがわかっていなかったのだろう。さすが宮崎駿や庵野秀明はよくわかっている。

いいなと思ったら応援しよう!