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氷に潰される船ーフリードリヒの「氷の海」

崇高性の表現となると引き合いに出されるフリードリヒだが、有名な「雲海の上の旅人」と引けをとらないのが、「氷の海」だろう。圧倒的な氷の力に挟まれた帆船が描かれている。1823年の作品であり、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』1818年の外枠の話を考えると、極地探検家の行く末がこうだったかもしれないと想像できそうだ。

Das Eismeer (Wikipediaより)

北西航路を探すのに出かけて消息不明となった有名なフランクリン探検隊は1845年に出発したもっと先の出来事だった。だが、カナダの氷に阻まれて、沈没したのだろうことは容易に想像がつく。2014年に手がかりが見つかり、その後ほぼ完全な形で海底から発見されている。

フリードリヒはこのモチーフが好きだったのかもしれない。1798年にすでに難破船を描いている。こちらは、人影もあり、救助のようすもある。だが、これでは単なる記録画だろう。それが、四半世紀を経て力強い表現となったところにフリードリヒの魅力があるのではないか。

Wreck in the Sea of Ice (Web gallery of artより)




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