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岸部露伴ルーヴルへ行く

岸部露伴は美術雑誌でただ真っ黒いだけの絵画を見つけた。それを見つけた時、昔の事を思い出した。美しい黒い髪の毛をした女性。その人が何事かを自分に言っている。それが何だったのか、どうしても思い出せない。そんなある日、とあるオークションで黒い絵が出品される事を知った岸部露伴はその絵を競り落とす事にした。持ち帰ると着けられていたのかちょっとした隙を突かれて、何者かによって盗まれてしまう。

しかし、その絵は直ぐに取り戻す事が出来ました。絵は道端に放置されており、捨てられているようでした。周囲を見渡すも、持ち出した者は何処にも居なかった。

その頃、持ち出した男は山の中に居た。後ろから迫ってくる車のクラクション音から逃げていたのだ。だが、そこにあるはずの車の姿はない。やがて、男は力尽きて地面に崩れ落ちてしまう。そこに真っ直ぐに進んで来るクラクション音と姿なき車。男は山の中でひっそりと「轢き殺された」。これは何なのだろうか。得体の知れない恐怖から物語は始まる。

競り落とした黒い絵の裏には「ルーヴルで見た黒。後悔」と記されていた。岸部露伴はこの絵と共に昔出会った女性がチラついてならない。その女性は何事かを自分に言っていた。だが、何だったのか思い出せない。それを思い出す鍵がルーヴルにあると思い、岸部露伴は担当編集の泉京香と共にフランス・パリに行くことにした。

そこに眠っていたのは絶対に見てはいけない「邪悪な絵」が眠っていたのだ。その絵は絶対に見てはいけないし触れてもいけない。その事を思い出したのは、黒い絵の本物を見たその時だった。その黒い絵は只、黒いだけの絵ではなく、薄い灰色に近い線で描かれた美しい女性の絵が描かれていた。その絵の女性はかつて出会った女性にソックリだった。

あの時、女性はこう云ったのだ。

“全て忘れて”

この黒い絵が「世界で最も邪悪な絵」になった理由は、この絵が描かれた経緯にある。この絵の作者は山村仁左衛門と言う絵師で、家柄も絵師の家系でした。しかし、仁左衛門が描きたい絵とお家が求める絵は正反対で、どうしてもそれを続けるなら家を出て行くように言われ、その様にしました。

暫くの間は妻と共に穏やかな生活を送っていた仁左衛門でしたが、妻が重い病に罹ってしまいます。貯蓄は高額な薬代で一瞬にして消失。困った仁左衛門はもう一度家に戻る事にしました。

家元は「自分よりも優れた絵を描く事が出来たら認める」と約束しました。その約束を果たす為に仁左衛門は妻の絵を描き続けましたが、どうしても妻の美しい黒い髪の毛を表現できる色が見つけられませんでした。

妻は少しでも事態が良くなるように神頼みをしに行きました。そこで見つけたのが神木から出る黒い樹液でした。それを持ち帰ると仁左衛門はとり憑かれたようにその黒い樹液を求めるようになり、神木から樹液を取っている姿をライバルに見られてしまいました。

神木を傷つけた罪でお役人に引っ立てられそうになります。それを妻が庇いますが、病弱な妻を容赦なく殴り倒し、妻はそれが原因で息絶えてしまいます。その怒りが噴出した仁左衛門は薪割で使っていた斧でお役人を皆殺しにした後、最後の力を振り絞りながら、この世を恨みながら絵を描き上げました。その絵と使用されたご神木から使われた黒い樹液が仁左衛門の怨念と融合し、近づいた者を殺す絵となってしまいました。

絵の力は本人だけではなく、ご先祖様が犯した罪も見た者に負わせようとします。本当に後悔の無い人生を歩む事がどれほど難しいかを物語る作品です。

おススメ度:★★★★★
ホラー度 :★★★★☆
人間の怖さ:★★★★☆
ワクワク度:★★★★☆
感情移入度:★★★☆☆
魅惑度  :★★☆☆☆
不気味度 :★★★★★
気持ち悪さ:★★★☆☆

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