【コロナ禍の犠牲者は感染者だけではない】という主張について検証してみる

下記の画像を見つけたので、推測1と2のどちらが正しいのか(もしくはどちらも間違っているのか)を検証することにした。

画像1

2020年1~3月と比較して、2021年1~3月は東京都の死者数が2,315人、大阪府の死者数は843人増加した...と言いたいところだったが、調べてみたところ値が微妙に違っていたので、ここに私が調べた限りでのデータを提示する。

【データの出典】
東京都の統計
『人口の動き(令和2年中)第16-1表 区市町村、月別死亡数(総数)』, https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/jugoki/2020/ju20qa1610.xls
『東京都の人口(推計)- 過去の推計 - 令和2年国勢調査人口(確報値)に基づく人口(推計)』
2021年2月, https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/jsuikei/2021/js212a0000.xls
2021年3月, https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/jsuikei/2021/js213a0000.xls
2021年4月, https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/jsuikei/2021/js214a0000.xls

e-Stat『人口動態調査 / 人口動態統計 月報(概数)』
令和3(2021)年1月分, https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032101978&fileKind=1
令和3(2021)年2月分, https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032106436&fileKind=1
令和3(2021)年3月分, https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032109239&fileKind=1

大阪府『推計人口(月報)』
令和2年2月1日現在, https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3387/00014690/jk20200201.xlsx
令和2年3月1日現在, https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3387/00014690/jk20200301.xlsx
令和2年4月1日現在, https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3387/00014690/jk20200401.xlsx
令和3年2月1日現在, https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3387/00014690/kakutei_jk20210201.xlsx
令和3年3月1日現在, https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3387/00014690/kakutei_jk20210301.xlsx
令和3年4月1日現在, https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3387/00014690/kakutei_jk20210401.xlsx

調べたデータをもとに表を作り直すと、以下の表のような結果となった。両都府の死者数増加率が、元画像よりも高くなっている。

画像2

次に、この死者数増加率の差が、自殺者数の増加によって生じたのか否かを検証する(本来であれば年単位で比較した方が適切であると考えられるが、元画像に合わせて1~3月のデータのみを用いて比較する)。

【データの出典】
警察庁『自殺者数』
令和元年中における自殺の状況, https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R02/R01_jisatuno_joukyou.pdf
令和2年中における自殺の状況, https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02_jisatuno_joukyou.pdf
令和3年の月別自殺者数について(12月末の暫定値), https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R04/zantei0312.pdf

e-Stat『人口動態調査 / 人口動態統計 確定数 死亡』
令和2年 第1表-2 死亡数,死因(死因基本分類)・性別(総数、ICD-10コード A~T), https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032119363&fileKind=1
令和2年 第1表-2 死亡数,死因(死因基本分類)・性別(ICD-10コード V~Y、U), https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032119364&fileKind=1

【参考記事】
青年の発達と未来を考える(引っ越し先)『▼国内における餓死者の推移---「栄養失調」死は「餓死」なのか?』, https://ost-heckom.hatenablog.com/entry/20130530/p1

画像3


2020年1~3月と比較して、2021年1~3月は東京都の自殺者数は69人、大阪府は55人増加した。自殺者数の増加が原因で、東京都の方が死者数増加率が高くなったわけではないことがわかった。
ところで、「経済死者」には餓死者数も含まれているものと考えられる。全国の餓死者数[栄養失調+食糧の不足(高齢者の栄養失調など、餓死でない場合も含まれるが餓死者として算入した)]は1933+23=1956人(2020年)であり、2021年に餓死者が急増したというデータが出てこない限り、死者数増加率が高くなったという説明はつかない。
そうすると、元画像の「推測②大阪は経済死者を低く抑える事ができている」というのはほとんど当てはまらないように思われる。

では、「推測①大阪はコロナ起因の死者がより正確に検出されている」という点についてはどうだろうか。新型コロナウイルスの検査数等を比較して検証する。

【データの出典】
東京都オープンデータカタログサイト『東京都 新型コロナウイルス感染症検査の陽性率・検査人数』, https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/data/130001_tokyo_covid19_positivity_rate_in_testing.csv
大阪府新型コロナウイルス感染症対策サイト『大阪府の最新感染動向』, https://covid19-osaka.info/data/summary.csv

厚生労働省オープンデータ
『新規陽性者数の推移(日別)』, https://covid19.mhlw.go.jp/public/opendata/newly_confirmed_cases_daily.csv
『PCR検査実施人数』, https://www.mhlw.go.jp/content/pcr_tested_daily.csv
『死亡者数(累積)』, https://covid19.mhlw.go.jp/public/opendata/deaths_cumulative_daily.csv

画像4

画像5

都道府県のデータでは東京都の陽性者数が51,904人、大阪府が22,166人となっていたが、厚生労働省のデータでは東京都が60,674人、大阪府が22,167人となっていた。東京都の陽性者数に約9,000人の誤差が生じた理由は不明である(過少報告?)。
陽性率は東京都の方が高く、死者数も東京都の方が一方で、致死率(死者数/陽性者数)は大阪府の方が高いという結果が出た。

結論

以上より、「推測①大阪はコロナ起因の死者がより正確に検出されている」というのは正しい可能性があるが(断定はできない)、「推測②大阪は経済死者を低く抑える事ができている」は当たっていないだろうという結果になった。

さいごに

月ごとにデータを調べるのは大変なので、できるだけ年単位のデータを用いることをおススメします。あと、万が一誤り等あったら遠慮なく指摘してくださいね。

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