エアコン掃除は自分でできる範囲で十分?掃除後に分解して検証してみた!
エアコンからいやな臭いがする!ルーバーに黒い斑点が付いている!そんな時は自分でエアコンを掃除したいですよね。見えるところは自分でも簡単に掃除できますが、本当に自分で掃除できる範囲だけで十分といえるのでしょうか?
本記事では、国内大手家電メーカーでエアコンの設計を10年以上担当している著者が、自分でも掃除できる範囲をキレイにしたあとにエアコンを分解して汚れがどれほど残っているのかを徹底検証しました。
本記事は「自分で簡単にできるエアコンの掃除方法をエアコン設計者が実践解説!」で掃除した後のエアコンをそのまま分解して確認しています。
この記事で解決できるお悩み
自分で簡単にできる掃除だけで十分キレイになるの?
市販のエアコンスプレーで本当にキレイになるの?
残った汚れはキレイにできるの?
※なお、本記事はご自分でのエアコン分解洗浄を推奨するものではありません。本記事を参考にすると分解洗浄ができてしまいますが、エアコンが壊れた場合、責任は負いかねますのでご了承ください。
エアコンの構造を知ろう
エアコンの汚れを確認する前に、エアコン室内機の構造を簡単にご紹介します。
室内機は、外観に前面パネルと本体カバー、ルーバーがあります。次にホコリの侵入を防ぐためのフィルター、部屋の空気を冷やしたり暖めたりするための熱交換器、部屋の空気を取り込んで吹き出すための送風ファン、風の経路である通風路、熱交換器に結露して流れてきた水を排水するためのドレンパン(前面側と背面側)で構成されています。
本体カバー
本体カバーはエアコンの外観となる部品です。上の格子になっている部分から部屋の空気を取り込みます。
前面パネル
前面パネルは本体カバーと同じようにエアコンの外観となる部品です。
前面パネルが本体カバーと一体になっているモデルもありますが、大抵は別になっていて、パネルを開けるとフィルターを取り外すことができるようになっています。
ルーバー(上下風向ルーバー)
ルーバーは吹き出し口に取り付けられていて、上下に動いて風向を変える役割があります。ルーバーは風向の制御を行う部品ですが、外観となる部分でもあります。
フィルター
フィルターは、エアコン本体の中にホコリが入らないようにする役割があります。
フィルターがないと熱交換器や送風ファンにホコリが詰まってしまいます。エアコンの中やフィルターがホコリで目詰まりしたままにすると、エアコンの性能が下がってしまいます。さらには、エアコン内部の圧力が不安定になり風の逆流が起こって、冷房のときに熱交換器から水が飛んでエアコンから水が降ったり垂れたりするおそれがあります。
送風ファン
大抵のエアコンには送風ファンとして貫流ファン(クロスフローファン)が採用されています。ファンの断面を見ると三日月の形をしたハネが30枚ほど円周状に並んでいます。ファンが回転すると空気が吸い込み側から入り吹き出し口側から出ていきます。風がファンの中を横切るように流れるため貫流(クロスフロー)ファンと呼ばれています。
貫流ファンは単体だと風が入るところと出るところが定まらないのでケーシングと呼ばれる通風路が必要になります。
通風路・ドレンパン(前面側と背面側)
通風路は、送風ファンの背面側から空気の吹き出し口に向かって構成されていて、送風ファンから空気の吹き出し口に向かって気流を案内します。通風路は、ケーシングとも呼ばれ送風ファンの気流方向を決める役割があります。また、吹き出し口には左右ルーバーが並んでいてリモコンで自動で動くモデルと自分の手で操作するモデルがあります。
ドレンパンは、冷房運転のときに熱交換器に結露して流れてきた水を受ける部分。露受け皿とも呼ばれます。熱交換器は前面側と背面側に分かれているため、ドレンパンも同じように前面側と背面側があります。
熱交換器
熱交換器は、厚み0.1mmのアルミのフィンが約500枚並んでできています。フィンにはパイプが通っていて中に冷媒というガスが流れています。フィンの穴は「立ち上げ」られた形になっていて隣のフィンに接しているので、この立ち上げの高さでフィンの間隔が決まります。
冷房のときは冷たい冷媒が熱交換器全体を冷たくします。逆に、暖房のときは暖かい冷媒が熱交換器全体を暖かくします。部屋から取り込んだ空気を熱交換器に通して再び部屋に戻すことで冷房や暖房を実現しています。
自分で掃除できる範囲は?
自分でエアコン室内機の掃除ができる部分は次の8箇所です。それぞれの部分については「エアコンの構造を知ろう」で解説しています。
送風ファン(見える部分)
本体カバー(見える部分)
吹き出し口
左右ルーバー
フィルター
前面パネル
上下ルーバー
熱交換器(前面側)
自分でできる範囲だけを掃除したときの汚れを比較
まず、自分でできる範囲だけを掃除したとき、掃除の前後でどれほどキレイになったのかを比較してみましょう。
掃除したエアコン富士通ゼネラルのスタンダード機種で新品で使い始めて約1年使用した状態です。フィルターの掃除は2回行いましたが、エアコンクリーニングは実施していません。
メーカー:富士通ゼネラル
型式:AS-AH361L
使用環境:LDK(12帖)
使用年数:1年1ヶ月
使用時間(時間/日):約14時間
フィルター掃除:2回
自動お掃除機能:なし
エアコンクリーニング:なし
上下ルーバーの汚れ比較
上下ルーバーは、比較的汚れが少なかったですが、軸のまわりに黒い斑点のような汚れが目立ちました。掃除後はその黒い斑点が完全になくなっています。
フロントパネルの汚れ比較
フロントパネルも比較的汚れは少なかったですが、フロントパネルの裏面はコバエの死骸やホコリで汚れていました。掃除後はそれらが完全になくなりキレイになりました。
フィルターの汚れ比較
掃除前、フィルターには大量のホコリが上面吸い込み側についていましたが、洗浄後は完全にホコリを取り去ることができました。
熱交換器の汚れ比較
掃除する前も熱交換器はあまり汚れていませんでしたが、部分的にフィンの間にホコリが詰まっていました。掃除後はそのホコリが洗浄液で流れてキレイになっていました。
送風ファン・吹き出し口・上下ルーバーの汚れ比較
掃除前後で一番違いが分かりやすい場所です。吹き出し口や左右ルーバーには黒い斑点の汚れが目立ちましたが完全になくなっています。また、送風ファンの汚れの固まりも落とすことができています。送風ファンの内側はとても掃除がしにくかったのでまだ汚れが残っている部分もありました。
汚れがひどくなりやすいところはどこ?
今回は自分でできるエアコンの掃除方法を実践解説してきました。掃除前後の画像比較をみると見違えるほどキレイになっているのが分かります。
では、まだ掃除できていない部分はどれくらいあるのでしょうか?分解図を使って違いを見てみましょう。
自分でも掃除ができるところを黄色、分解すれば掃除ができるところを赤色で塗ってあります。また、特に汚れがひどくなりやすい部分には注意マークをつけてあります。
自分で掃除できるところ
前面パネル
フィルター
上下ルーバー
左右ルーバー
本体カバー(見えるところ)
熱交換器(前面側)
送風ファン(一部)
分解すると掃除できるところ
前面パネル
フィルター
上下ルーバー
左右ルーバー
本体カバー(まるごと)
熱交換器(まるごと)
送風ファン(まるごと)
ドレンパン
通風路
汚れがひどくなってしまうのはなぜ?
同じエアコンのなかでもひどい汚れになってしまうところがあります。汚れる原因を部品ごとに解説していきます。
送風ファン
エアコンの運転中、ファンは高速回転していてホコリなどの汚れを含んだ空気がファンの内側を通り過ぎます。風の流れが激しい部分と、よどむ部分があり、ホコリはよどんでいる部分に付着します。イメージは、部屋の風がよどむところにちりやホコリがたまるのと同じです。運転するごとに汚れが蓄積していきガンコな汚れになってしまうのです。
通風路・ドレンパン
冷房運転中、通風路にはずっと風が流れているのでキンキンに冷えています。冷房を止めると部屋の空気がエアコンの中に入ってくるので通風路がくもります。エアコンの中に舞っているホコリはくもった通風路に付着、そのまま乾燥して定着します。運転するごとに同じようにして汚れが増えていくので広い範囲に汚が目立つようになってしまいます。
ドレンパンは、冷房運転のときに熱交換器に結露して流れてきた水(ドレン水)を受ける部分。ドレン水はドレンホースから排水されますが、冷房運転を止めると流れ切らなかった水はドレンパンに残ります。熱交換器からのドレン水には、空気にのってきたカビや菌・微生物が含まれていてバイオフィルムというヌメリ汚れに発展してしまいます。これは、お風呂や台所の排水口のヌメリと同じ現象です。バイオフィルムはドレンパンを直接しなければ洗浄することはできません。
熱交換器
熱交換器は、部屋から取り込んだ空気がフィルターの次に通る場所。冷房運転では、空気が熱交換器で冷やされて水がでます。0.1㎜程度の薄いアルミフィンが1㎜という狭いピッチで並んでいるため、エアコンを止めてもフィンの間に水が表面張力で残ってしまい、そのまま乾燥すると空気に混ざっていたホコリや菌がフィンに汚れとなり残ってしまいます。また、熱交換器の下の部分はドレンパンと触れているため、ドレンパンと同じようにバイオフィルムでヌメヌメの汚れも発生してしまいます。
ご注意
本記事はここから完全分解洗浄の解説に入ります。個人でのエアコン分解は故障リスクを伴いますので、本記事を参考に分解を行い故障してしまった場合等の責任は負いかねます。それでも読んでいただける方のみ続きをご覧ください。
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