表紙2

ノート的境界線群 3号

1.新作詩

「旅立ちに向けて」

液体の薬が熱を出して
気体へと変わっていく
先を越されてしまった私は
ブラックホールへ舌を突っ込む
存在も時間も古びた愛情も
秩序を失ってしまえばいい 

踊り手たちが自転と一致して
いつまでも夜が訪れない
取り残された私は
ダークマターを虹色に塗る
実在も虚構も曖昧な同情も
混沌で纏められてしまえばいい 

可能性としての航路は
いつまでも船が描かれない
波音はスピーカーが作り出している
文字に詰められた磯の香り
昨日できたばかりの島は
明日沈んでしまう希望 

私を溶かしていく病
眠りへと定まっていく体
旅立ちに向けて
魂まで固体にする

2.新作短歌

もし君がもし君がって聞き続け君のもしもを捨ててしまった

3.旧作詩紹介

「浴衣」

僕らの故郷には 夏が少ないから 
君の浴衣は 本当に罪だった 

僕らの故郷には 星が多いから 
君の浴衣は まばゆく照らされていた 

夏が終わる頃 僕は思い切って 
君にそっと 別れを告げたんだ 

僕らの故郷には 時間がとどまるから 
君の浴衣は まるで昨日の事 

また夏が来て また会えた時 
二人の涙は 沢を下って 

また来た夏の 永遠の中で 
再び二人は 別れの準備を 

僕らの故郷には 残酷な静寂がある 
君の浴衣は 優しい罪だった

★七年ぐらい前の作品です。全く経験していないことを書くと怒る人もいますが、私は大好きです(笑)物語を考えて詩を書くことが多いのですが、これはj-popに影響されていますね。

4.あとがき

そういえば最近、めっきり個人サイトというものを巡らなくなりました。ネットを始めた頃は創作者によるテキスト主体の個人サイトがたくさんあり、そこを訪れて作品を楽しんでいたものです。「ウェブリンク」なんていうものもありましたね。今でももちろん個人サイトで発表している人もいるんでしょうが、ブログやSNSが便利なのでそこら辺を巡って終わってしまうんですよね。……というわけで、たまには個人サイトに出会いに行こうかと思っています。では!





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清水らくは
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