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モテ運アップ!? “磯の鮑”Tシャツ!
「あの、すみません。ちょっといいですか?」
と、大学生風の若い男性。
ここは新宿。
道をたずねたいのかなと、親切心で歩みを止めてしまったが、聞けばナンパだという。
美容室の勧誘かなー。
みかんとか売り付けられちゃう系かなー。
懐かしの「手相をみますよ」系かなー。
MLMやってる人なのかなー。
ナンパ塾の実践テスト中の人なのかなー。
いろいろ考えながらワクワクしつつ相手の話しを聞いていたら、ホントに最後までなにも出てこなかった。
スゴくわたしのことを褒めてくれたけども、最後にわたしが“既婚者”だと伝えると、一瞬表情が曇り、なにかがサーーっと引くような空気が流れた。
「ん?これはホントにナンパだったのかな」
なーんて思いながら、道を急ぐと今度は同い年くらいのサラリーマンに声をかけられた。
この人もやたらと、わたしのことを褒めてくれた。
「すごくキャリアウーマンって感じで、仕事できそうですよね!」
“仕事できそう”って、いい響きだな。
「綺麗ですね」「可愛いですね」よりも、グッとくるな。
“ヤりたいがための殺しの常套句”だとわかっててもグッとくるな。
てか、わたし、今日そんなに隙があるように見えてるのか?
むしろ、競歩選手も驚くほどの、殺気にも近いオーラ放ちながら歩いてるはずなんだけど。
あぁ、きっと、このルブタンもどきのハイヒールのせいだろうな。
きっとこのハイヒールで踏まれたいんだろうな。←
加齢と共に女性ホルモンが絶賛低下中のわたしにとっては、自分を“女たらしめる”ための数少ないアイテムなんだよね。
わたしにとってこのハイヒールは、男を踏みつけるためのものではなく、この東京砂漠をしっかりと踏みしめるためのものなのだよ。
これは、いわば『女性性』と『自立』の象徴かつ『自由』を獲得するための戦闘装備なのだ。
と、まあ、そんなことはどーでもいい。
ひさしぶりのナンパだったが一体いつもと何が違うのか・・・
・・・あっ!!!
こ・・・
これだーーーーーっ!
今日初めて着た、“磯の鮑”Tシャツだーーー!!!
ダサいっ!
ダサかわいいっ!!!
磯の鮑Tシャツ!
↑埼玉県民お馴染みの「うまい!うますぎる!十万国まんじゅう」のCM調に。
これは、緊急事態宣言・外出自粛要請、つまりSTAY HOMEのなかで、丘サファー以上のサーファーっぷりをネットサーフィンで発揮してた頃になんとなく思いつき、遊び心に火がついて作ったもの。
1枚からネットで作成・オーダーできるというので、大好きな落語演目のうちのひとつ『磯の鮑』から着想を得て作ってみた。到着までに意外と時間がかかったが、昨日届いて早速着て出かけた。
『磯の鮑』とは、ピュアな与太郎が女郎買いをミスっちゃっておっかしいよねという噺。
そこだけ聞けば何もおかしい要素は感じられないが、これが噺家によって滑稽噺として成立するのだからフシギ。
「与太郎」「女郎」なんて言葉が出てきて、軽く人を小馬鹿にしているような内容だから、禁演落語に指定されてしまった過去もあるのだけど、わたしはおもしろいと思うし、これを上手く演れる噺家さんは腕があるなぁと感じる。
イタズラ好きな留さん
バカで純粋な与太郎
色っぽい花魁
登場人物のキャラがはっきりしているから、観ている方はとてもわかりやすい。
「与太郎」のバカっぽさと「女郎」の艶かしさを演じわけることはもちろん、女郎が与太郎にドン引きしている様子や、与太郎に突然ぶたれた(つねられた)不意打ちの驚きや怒り、痛さがない混ぜになった心情を色っぽく表現できることが、噺家の腕の見せどころだと思う。
『嗚呼、今貴方が目の前で“素敵ですね”と褒めちぎってる相手は、こんなダサいTシャツを着てるんですよ!』
と、笑いたいのをグッとこらえて、心の中でちびまる子ちゃんの野口さんバリにほくそ笑む。←
『デザイナーでもないのに自分で作ったシャツを自分で着ちゃう、ヤバい方向に自己顕示欲の強い人間なんですよ!』
『しかも、“Iso no Awabi”ですよ? でもって、“Izu no Wasabi”ですよ!?』
もう、自分ひとりだけがおかしくってしょーがない。
自信作であるおニューのダサカワイイTシャツ(なんなら最高にダサい!)に何かツッコミを入れて欲しくて、身悶えるわたし。
「あ。“Izu no Wasabi”って、伊豆のお土産Tシャツですか?」
うん、このツッコミだったら30点だな。
「Wasabi?rakugo?・・・あ、もしかして、柳家わさびのファンなの?」
これだったら85点。
なんてことを考えていたが・・・
結局、最後までTシャツには何も指摘してもらえず、この男性も私が“既婚者”だと告げるとアッサリ去って行った。
つまんねーーのっっ。←
でも、もし・・・
「あれ?このTシャツ、もしかして“磯の鮑”? そっかあ、旦那さんいるんですね、残念です。貴女は僕のこと知らないかもしれないけれど、僕は貴女のこと知ってたんですよ。・・・これじゃ、ホントに“磯の鮑の片想い”ですね。アハハ。」
とか言われた日には、グラっときちゃうよね!
ハートを鷲掴みにされちゃうよね!
うっかり好きになっちゃうよね!
120点満点のアンサーだよね!!!
でも、知ってるの、わたし。
世の中にそんな“落語ジョーク”が通じる洒落た男性なんてほとんどいないってこと・・・。
そして、なぜ、1日に2回もナンパされたかってことも・・・。
本当は『磯の鮑Tシャツ』のモテ運アップのご利益だと信じたい!
でも、でもね。
これは単純な『ゲレンデ効果』なの。
ほら、ゲレンデのゴーグル姿の女子は美人に見えるでしょ?
コロナ禍のマスク姿の女性も無条件に美人に見えちゃうんだよっ!
マスクで顔ほとんど見えないからなっ。(怒)
さらに、コロナ禍で様々な制限がかけられ、抑圧された男性たちの欲が弾けるタイミングなんだろうな。
わたしみたいにヤバいおばさんは大丈夫だけども、若くてピュアな乙女たちは、コロナ禍の、そしてコロナ終息後の『コロナンパ』には十分気をつけるんだぞ。
そして、iTunesリストには、ピンクレディーの『S・O・S』を追加してから、お出かけするんだぞ♪
・ ・・ってことで、わたしは
これであなたもモッテモテ!
モテ運アップ!磯の鮑Tシャツ!!!
と、称して『BASE』あたりでTシャツを販売することを画策してみよう。
え?
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