2曲目・カノン【音楽レビュー】
ぼちぼちやっていきましょう。二曲目はパッヘルベル「カノン」
例によって音楽初心者の主観によるレビューですのでご承知おきください。
概要:実は二つに分かれてる曲
ヨハン・パッヘルベル 作品37
3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーク ニ長調
名称の通り、この曲はカノン部分とジーク部分に分かれている。今回タイトルでカノンと題した通り、今回はカノン部分だけ取り上げてレビューさせていただくことにする(筆者が無知のため、お許しください)。
ニ長調はベートーヴェンの第九のような華やかで輝かしいファンファーレみたいなイメージ。勝利や栄光を連想させる調ではあるものの、カノンのゆったりおっとりしたテンポ感が独特の調和を生み出している。
感想:畳み掛けるように芳醇なメロディーが重複する
最初はチェロによる静かな導入から始まる。冒頭の四小節、これが絶妙に音が取りにくい!当方、大学オケ時代にチェロを弾いていたが、実のところこの曲はなんとも苦行だった。というのも、チェロはずーーーっと同じ4小節を繰り返すのだ。ヴァイオリンやヴィオラはちょっとくらい変化があって面白いのに(羨望)。ま、チェロが美味しいところを持っていくようになったのは19世紀頃の話。
ちなみにより濃厚なカノンを実現させるために、この曲はヴァイオリンが三つのパートに分かれている(大体の曲では第一と第二の二つに分かれている)。
カノンとは日本語でいうと「輪唱」のこと。カエルの歌のように後から後から同じ旋律が追いかけてくる形式の音楽だ。ゆえに、序盤は割と顕著に音が低い楽器から高い楽器に向かってメロディーの受け渡しが見られる。次から次へと新しい音楽が登場しては移ろっていく。
そして第一ヴァイオリンによって高らかに奏でられるメロディー。残念ながらこの先同じフレーズは出てこない。刹那的な音楽との出会いと、その場その場で色を変える夕焼けの空のような音楽の位相。決して出し惜しみすることなく、しかし謙虚に。そして真摯に音楽を訴えかけるその様は人生における達観した感情を聴衆にもたらしてくれる。
中間部になると追いかけっこの中に第二、第三ヴァイオリンによる伴奏やハモリが加えられたりもするが、輪唱の形式はそのまま変わらない。
じっとりねっとりと(褒め言葉)終局に向かう頃には、バラバラだった音楽がより調和して一つの方向にまとまっていく。分離から統合へ。バラバラだった気持ちがまとまって一つの解を出すように。悩み多き時代を経て喜びを噛み締めていくように。精神をより高次な場所へと引き上げてくれる和音で曲は幕を閉じる。心が高ぶって踊りだすほどの高揚感はないが、曲が終わった後の満足感は桁違い。ニ長調特有の輝かしさもあって、色んな感情が浄化されていくような気がする。
ただ奏者にしてみれば、甘美な印象に反してかなり忍耐の曲。スマホゲーム「タクトオーパス」では世話好きなおっとり美人として擬人化されていたが、彼女の芯の強さはこういった忍耐力から来ているのかもしれない。
余談:カノン進行について
このカノンで使われているコード進行、すなわちチェロが延々と苦しめられる魔の四小節のことだが、このコード進行は「カノン進行」と呼ばれている。
日本のポップ音楽にも影響を与えており、あいみょんの「マリーゴールド」だとか、一青窈の「ハナミズキ」にも使われているのだとか。テンポは違うかもしれないが、最初の四小節分を口ずさみながら聴くと絶妙にマッチしているような気がしなくもない。
難しいなあと言う人は、ぜひカノンに合わせて童謡「カエルの歌」を歌ってみよう。
おすすめ動画
多分Youtubeなんかでカノンと調べると割と始めの方にでてくるやつ。これをBGMに朝食を食べると、イ◯ンの食パンさえも高級な味になる。華やかで歯切れのよいテンポ感が美しい。
チェロの苦悩をより聞きたい場合はこちら。弦楽器四本の比較的クラシカルな室内音楽の構成だが、オーケストラ仕様に負けない儚さと力強さを魅せてくれる。
今回は以上です。ご一読いただき、ありがとうございました。次回の更新は未定ですが、気が向いたらまた書きに来ます。