人の心に残る言葉をあやつる人の、頭の中を見てみたい。
小説家マーク・トウェインの
「ひとつのほめ言葉で2カ月は生きられる」
という言葉が好きです。
本当にその通りだなあと思うし、2カ月よりもっと長く生きられる言葉、なんなら一生きっと忘れないだろうっていうくらいに嬉しい言葉っていうのも、あると思います。
最近、しみじみとこの言葉を思い出す出来事がありました。
少し前に、人生で初めての挑戦で、2カ月くらい苦しんで、ようやく日の目を見るところまできたっていう仕事が終わったんです。
私は普段、自分の仕事のことを人に話すことはあまりしないんですが、このときばかりはすごく達成感があって、周りの人にもこの仕事を見てほしいと思って、近しい友人何人かに連絡したんです。「見てみてー!」って。
送ってすぐに全員「ありがとう、見てみるね」的な返事をくれたんですが、その後に本当に見てくれてコメントまでくれたのは、ひとりの先輩だけでした。
そのひとりの先輩は、「これ、すっごく大変だったでしょう?その苦労がありありと想像できるよ。本当にお疲れさま。よくがんばったね。わたしもがんばろうって、刺激をもらったよ。」という返事をくれました。
私は、このひとことが、すごく嬉しかったのです。
今までの私のキャリアからしたら苦手分野のことに取り組んで、それを形にして、公にできるところまで持っていくっていうことの苦労がどれだけのものだったかを全てわかっていて、だからこそ私も送ってきたんだっていうこともわかった上で、さらっと労ってくれた優しさが、嬉しかったのです。
他の友人たちはというと、「見てみるね」とは言ってくれたものの、コメントはもらえませんでした。
みんな子育てなどで忙しいし、きっと実際には見ていないのかもしれないし、見ても特に興味がなかったのかもしれないし、よくわからないけど、特に反応がなかったというのが現実でした。
なんだか寂しいっていう気持ちもあります。
けど、忙しい毎日の中で、ふと友人が送ってきたリンク先を熟読する余裕はないかもしれないし、後でちゃんと見ようと思っていたけど忘れてしまっていたかもしれない。
正直、私が逆の立場だったら、もしかしたら同じことをしてしまっていたかもしれない。そう思うと、仕方ないのかもという気もする。
でも、他の人はそういう感じだったからこそ、その先輩のくれたひとことはひときわ輝いたものに見えました。
私がこれからその仕事のことを思い出すときには、あのとき先輩がくれた言葉をセットで思い出すんだと思います。
人がその思い出を振り返ったときに、セットで出てくるような心に響く言葉を発するって、すごく難しいことだと思うんだけど、この先輩はいとも簡単にそういう言葉を発する。
思い返せばその先輩は、私が悲しい出来事で沈んでいたときにも、一緒に泣いてくれて、心に寄り添う言葉をくれる人でした。
あのときも、誰よりも胸にすうっと染み込む言葉をくれたのは、あの人だったなあって、思い出しました。
私もそんなひとことを人に与えられるような人になりたいなと思いました。
人の心に残りたいっていうわけではなくて、本当に嬉しいひとことは、その思い出そのものをさらに素敵なものに変えてくれる力がある気がするから。
そんな言葉をつかえるようになったらいいなあ。
近々その先輩に会う予定があるので、頭の中を少しのぞき見できたらいいなと思っています。
毎日どんなことを考えて、どんな本を読んで、どんなふうに言葉を使っているんだろう。