![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10376636/rectangle_large_type_2_a336c616d0c46b3a74a60564a2e6fa2e.png?width=1200)
見つけられなかった彼女へ
ふいに母親からきた連絡。同級生の名前を聞かれた。
彼女の名前を答えると「亡くなったみたいよ」とひとことだけ返ってきた。
私はまだ20で、大学生で。
あまりにも唐突な訃報にこころがしんとした。
母は医療法人で働いていて、たまたま日報に出てたのを見た。病院に運ばれてきた時はすでに心肺停止だったらしいと。
慌てて訃報を調べた。なにも出てこなかった。
どうして、どのように死んでしまったのかなんにも分からなかった。
彼女の事を思い出そうとした。
小中の同級生。転校生。大人しい子。メガネを掛けてて、くせ毛。たしか合唱部。クラスが同じだった事もあった。気がする。
それだけ。
高校はどこに行ってたのか。今なにをしていたのか。どんな話をしていたのか。どんな事が好きだったのか。中学校で仲良かった子さえも。
なにも、なんにも出てこなかった。
ただ、ただしんとしたこころのまま。
死を知ってから、存在さえ忘れてしまっていた彼女に思いを馳せる。悼んでるように振る舞う。そんな私を、彼女はどう感じるのだろう。
中学校の学年グループは今も動かないまま。ネットの海にも現実世界にも彼女を見つけられなかった。
私は彼女の事を知らなかった。
それでも彼女は確実に居た。どこかで生きて、そして死んでしまった。
瞬間だったけれど、言葉足らずだけれど私はそれを知っていた。
それだけは、ずっと覚えている。