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白黒しか撮れないフィルムで写真を撮る意味とは
LeicaやPENTAXのモノクローム機を除いてデジタルカメラであれば写真はカラーで写るし後から加工したりカラーモードを白黒にしてやれば白黒の写真を撮ることも可能だ。しかもミラーレスであればファインダーも白黒になるので結果が分かりやすく非常に便利である。
そんな中わざわざフィルムを使って、しかも白黒でしか撮れないフィルムをなぜ詰めるのか。あくまで”私は”の話になるが少しばかりお話したいと思う。
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結論から行くと白黒が一番楽しめるところが多いからである。カメラで写真を撮る人はほとんどの人たちがミラーレスを使っていると思われ、もはやデジタルのレフ機でさえ前時代的な代物に見える。しかし、ミラーレスはあまりにも最適化され過ぎていて、趣味として楽しむには少し物足りないように感じてしまった。というのも元々はFUJIFILMのネオ一眼を使っていて、AFももっさりしているし、RAWでデータを記録すれば50枚ほどしか撮れない上に、メディアに記録するのに3秒くらいかかるようなカメラだった。2006年発売のカメラであるのでもう少ししたら発売から20年経つことになる。そういうところを考えると仕方がないことで、カメラができないことは撮影者が工夫するしかなかった。
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そこから新しいカメラを買うことに決めてミラーレスを借りてみたらその性能の良さや撮れる写真の美しさはもはや別物で非常に感動したのを覚えている。しかし、どこか簡単に撮れすぎてしまうので違和感は感じたが、やはり素晴らしい写真が撮れるので、初めて自分で買うカメラはミラーレスにしようと思っていた。しかし、当時大学生だった私には簡単に買えるような資金はなく、必要な分が貯まるまでにはかなりの時間を要した。
そうこうしている間に彗星のようにフィルムカメラが私の前に現れ、光学ファインダーの美しさと現像してみないと結果がわからない不便さが非常に楽しかった。資金的にも優しいことも相まって、すぐに買ってしまった。この部分の経緯は何度か記事にしているので、過去の記事を当たってほしい。
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さて、初めの間は安くて買いやすいFUJICOLOR100やColorPlus200のフィルムを使っていたのだが、冬場に使うには少し感度が低く感じていたのでISO400のフィルムが欲しかった。しかし、当時のSuperiaPremium400の1680円は私には高くて買えなかった。今から考えると十分安いが…そこで白黒フィルムのHP5+であれば990円と1000円を切っていたので買いやすかった。実は今でこそ白黒で撮ることが多いが、こんな理由で始めたのである。白黒なので色情報は使えず、形と明暗のみを使って表現しないといけないというのは頭に置きつつも、初めの頃は微妙な写真がほとんどだった。
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しかし、その中にこれは良いと思えたのが1枚だけあった。真冬の空、遠くに雲の峰が連なり、手前の丘の上には冬枯れの木々。実際に目で見ると雲の陰影はここまではっきりしておらず、たとえカラーで撮っていたとしてもここまでハッキリとはしなかったと思う。明暗差が強く出るのは白黒の醍醐味だろう。そういうところが非常に楽しく、いつもの目で見る景色とは違った風景を写せるのが非常に楽しかった。
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目で見ている景色とは違った写り方をするので、カラーで撮るときに比べてうまくいかないことも多い。しかし、全てがうまく写っている必要はないと思う。失敗しつつも良いコマがあればうれしいし、失敗するということはその分だけ伸ばしていけるところが多いとも言える。最近では黄色や赤のフィルターを購入したので、空の明るさやコントラストをある程度コントロールできるようになったので、さらに楽しめるところが増えた。
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楽しめるところと言えば、白黒フィルムはフィルムの中でも比較的現像がしやすく、撮影から現像まで自分で行うことができる。全てのプロセスが終わって、現像タンクの中から写真が写ったネガが出てくると非常に嬉しい。この喜びは何度現像しても感じないことはない。また、まだできていないが、プリントも比較的やりやすいので、これも挑戦してみたいと思い、準備を進めているところだ。
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表現に話を戻せば、カラーのようにパッと見て感動的とか心を動かされるというのは白黒では難しいかもしれない。しかし、細部に注目してみたり、記録されていない色を想像してみたりじっくりと見ればカラーよりも味わい深いものだと思う。また、既に触れているが、陰影が強調されて見えるので写真で一番大切な光を感じやすい。自分の求めた通りの露出が出れば、印象はすごく強いものになると思う。
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しっかりとこれは良いと思える写真はカラーに比べてかなり少ないかもしれない。現像してから結果を見ても何故かはっきりと写っていなかったり、全体にのっぺりしたグレーな写真になっていたりする。後で選択的に選んだり、その数枚だけ白黒にするのではなく、全て白黒というある意味ストイックな撮り方を続けていると、デジタルやカラーネガで感じられない感動が待っていると思う。
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そんな白黒の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。今週はここまで。今週も皆様にとって良き週末となりますように。
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