リンクワーカーになりたい
『社会的処方』『文化的処方』という言葉を知っていますか?
私も、昨年の演劇大学の講座関連で、確か八巻寿文さんと古賀弥生さんから教えてもらったのでした。
心身の状態があまり良くない方に、お薬ではなく、人との繋がりを処方するということで、より良い状態に導くということを、社会的処方というようですが、その中でも、アートの手法を用いて、孤立や孤独を解消すること、人との繋がりをつくることで、病的な状態から、より良い状態、ウェルビーイングを目指すことを『文化的処方』と呼ぶようです。
この社会資源と人を結びつける、マッチングする人のことを、リンクワーカーと言うそうです。
ずっと気になっていたのですが、先日、知人が長崎に来たので、長崎市内のブックカフェ巡りをしていて、BOOKS ライデンを訪れた際に、『社会的処方』の本を見つけまして『これ!!!』と購入したのでした。忙しくて、まだちゃんと読めていないのですが、勉強したいなと思っています。
ずっと医療、福祉の現場で働いてきました。
高齢者中心ですが、赤ちゃんから成人、高齢者。知的障がい者まで、かなり幅広い人たちと仕事をさせてもらいました。働いていて感じているのは、医療より、生活の場を支える福祉の場が好きです。
特に、居宅のケアマネージャーは、生活を支える社会資源をその人とどう結びつけるかという、相談や調整の仕事で、本当に楽しかった!いろいろな出会いや思い出がたくさんあります。同僚からは『天職だよね』と言われて自分自身でもそうだなと思っていました。しかし、演劇の仕事が忙しくなりすぎ両立が難しくなったことと、ケアマネージャーのやらなきゃならないタスクの多さ、特に記録物に追われて、燃え尽き症候群みたいになって、まわりに迷惑かけて仕事やめたのでした。
辞めたあとも、ケアマネージャーの更新研修を受けようと思っていましたが、研修の朝から気持ちが悪くなり断念。完全に不登校の子どもの気持ちがわかるつらさ。泣く泣くケアマネージャーの資格は失効中です。今でも、思い出すとちょっとウッとします。たぶんもう無理。
一方で、演劇は、いろんな形で続けてきました。
30代からは舞台制作をやり始め、調整や連絡、相談というケアマネージャーの仕事との共通点も感じながらやってきました。劇団制作、市民参加舞台の制作、小劇場の企画制作などを15年くらいは続けてきました。小劇場を運営すると、他ジャンルの方と知り合う機会が増えてきます。私には、演劇を続けたいなら、演劇だけやっていてはダメという持論があるのです。特に小劇場は多様な表現が許される場所としての懐の深さが大切だと思っています。
いつか、福祉と演劇(表現)を結ぶような仕事をしてみたいと思っていました。が、やり方がわからず。。。今年、知的障がい者施設での演劇ワークショップの実行委員をさせて頂くなかで、少し見えるものがありました。
演劇や表現活動は、好きではありますが、若い時の情熱的な季節は過ぎ去っているアラフィフの私です。今の私の関心は、演劇や表現活動そのものよりも、コミュニティや集団に興味があります。つまり劇団という集団や座組というチームで、何かを成し遂げることや、居場所としての機能の方に興味がある。
そんな私がやれること。やりたいことを、模索していた時に出会った『文化的処方』という言葉と『リンクワーカー』という仕事。
リンクワーカーは、人の繋がりを促す社会資源と人を結びつけるようなお仕事です。そう、ケアマネージャーとあまり変わらない仕事だなと思うのです。違うのは、対象が、高齢者限定でなくすべての人。文化的処方のリンクワーカーに関しては、文化的な地域の社会資源をよくわかっていて、その人に合ったプランをいかに立てることができるかなのでしょう。
例えば、ケアマネージャーは、この人はデイサービスに行った方がいいなと思ったとき、適当に事業所を紹介しているわけではありません。
デイサービスの規模(大人数か少人数か)
雰囲気やスタッフの質
管理している人の理念。情熱。
特色、趣味活動のようなプログラムの内容
時間帯や送迎に関して融通がきくか
将来的な流れや予後に対応できるか?
通っている人たちに馴染みの人がいるか?
など、何がその人にとって優先順位なのかを把握しながら選定していきます。
文化的処方のリンクワーカーは、この文化版と考えていいのではないかと思います。地域の文化的な社会資源をどれだけ把握しているかが肝で、私もまだまだだなあと思いますが、演劇だけでなく、いろいろな方と関わって芸術の仕事をやってきたことが生かせる仕事なのではないかなと思います。
まあ、難を言えば、この文化的リンクワーカーは、イギリスで生まれたようですが、日本においては、これからの職種で、制度として、仕事として確立していないということ。従って、お給料などが保証されるようなものではないことがあるかなと思います。また、潜在的な需要はあると思いますが、生活に文化的なことを取り入れるという発想がない方には、顕在的な需要がないとも言えますしね。
しかし、これまでも不安定ななかで生活をしてきたので、なぜかしら、何とかなるのでは?という気持ちがあります。まずは、生活の保証があるこの2年間で、いろいろ勉強をしたいなという気持ちです。
長々と、ご清聴ありがとうございました。
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