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残り野菜のカレー

ごはんにカレーを食べてから、轟音がひびきはじめたころてくてくと歩いていく。花火のちかくまで。

ひとりにぎやかな場に向かう気持ちでいたけれど、母がぴったり隣を歩く。左足を少しひょこひょこさせて、わたしの腕を掴み母は歩いていた。ひとの熱、左腕があつい。ちいさなみなとまちは海風が抜ける。

一ヶ月ぶりに距離を歩けるのだろうか、夜の道を。母はどこか愉しげ。
「いまから行くの?付き合おうか?脚ぴょこぴょこするけどいい?どっちからいく?どこでみる?」

建物の隙間から少しずつ大きくなるのを眺めて、花火へとゆっくり近づく。
「きれい、きれい」
「こっちの道が正解だね。街灯とか車のライトがあんまりないから、きれいに見えるね」
このまちの花火の間は長い。

「花火見に行くっていうから一緒に歩いてきたの、杖代わりにして」「あそこに行こうと思って。よく見えるでしょ」
母の実家のまえ、いぬと散歩に向かう叔父とばったり、ふたりの立ち話のうえに上がる音を、見上げる。

きょうは、あの轟音とあの火花を見上げたかった。

この感覚を、どこかが知ってる。時間の流れのなかにはない記憶。波紋であることを、知ってる。

近所のひとが集まる、ちょっと知られたその場所からは水上花火もよく見えた。

離していた腕をまた掴み、わたしはまた母の右側を、歩きはじめる。「きれいだったね。あそこにして正解だね、よく見えた。久しぶりに見たけど、みなとの花火も変わったね。きれいになったわ。きれいだった。」  






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