マーブルチョコ
スーパーで買い物をしていると、子どもがじっとわたしを見ている。親と逸れてしまった迷子だ。
まただ。
親と逸れた小さな子に、わたしはよく見つかる。
既に泣きながら見つめてくる子もいれば、「どうしたの?」というこちらの問いに「おかあさんがいない」と応えた途端に涙を流しはじめる子もいる。
なんということなさそうに「おかあさんいないなー」と話しかけてくる子もいた。
「探そうか」と手を出す。手を引くその手に、躊躇いはないのか。
大抵はすぐに見つかるものだ。街のスーパーは大して広くなく、動線を整えられて見渡しやすい。我が子を見つけた親は、わたしの顔を見ない。知らない大人を引いてる我が子の手を、怪訝に見ている。
わたしの手に残るのは、高い体温の熱と、信頼の感触、それがとてもいやなのだ。引かれたその手を離された、そのあとに残る感触。
親たちは特におどろきもせず心配していた風でもなく、誰に対してなのか気まずそうだ。少しぐらい離れたその距離は決して大した距離ではないと、そう思っていたのかもしれない。