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新月



「きみは扉を見つける。扉を開けたらどこへ行こうか。
観たいものをみせよう。」
きみはそう言ったんだ。


「そんなことを言われてもわからない。自分の望みはわからない。
そしてきみは、姿を見せない。」


どこまでも繁る木々のなか、歩く素足の足もとは、踏み締めるたび鋭く刺さる小枝、くすぐるように触る濡れた葉。なにか光って見せるものは透き通るように白い花のベル。

森を往くぼくの足は、いつでも在処を知っているようだ。ぼくは森のなかを彷徨っているのか、それともー
現れているのか、ぼくの足から。シャボン玉が膨れるように。

扉から漏れる黄金のひかりをぼくはいつでも見ている。
「ぼくの観たいものではなかったよ。ぼくのみたいものはどこにある?」

「そうか。それはしょうがなかったね。」







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