雨宮タビト自作解説① 「ブライアンが勝ったので」
はじめに
ようやく第二作を発表することができました。長かった。すぐ出せると思っていたのですが、全然編集する気になれずここまで来てしまいました。
そうすると、第一短編集のこともちゃんとお話ししておかなくてはならないかな、と思いました。僕は自作について語るのが好きなのですが、小説の後ろに解説がずらずら載っているのを是としない人もいると思います。
なので、以前解説を書いたものをnoteに出しておこうと思います。
「散歩者」「安田君」以外はSF色の強い作品がメインになっています。
最初に出す作品集は、どうしても「SF」と呼ばれるものにしたかったのです。
それなりのSF作品がそろったような気もしています。
気がするだけで気のせいだと思いますけどね。
では作者による全解説を。
ブライアンが勝ったので
2004年の年末に、ある人の依頼で描いた作品が元になっています。
このころは一番創作意欲が高かった時期で、いろいろな作品が生まれました。
僕は大切な人を阪神淡路大震災で失いました。
あの時のどうしようもない喪失感は、たぶん一生忘れることはないでしょう。
2011年に東日本大震災があり、ブライアンは復活しました。
mixiにこれを発表したときはとても評価をいただいて、たくさんの人がメッセージをくださいました。
しのぶさん、
あなたがいなくなって今年で20年になりますが
この作品をあなたに捧げます。
BGM:タイムマシーンについて/メレンゲ
スリーピーヘッズ
一生に一度だけ、誰かが降りてきて、
絶対に書けない作品を書かせてくれることがあるそうです。
ダニエル・キイスが「アルジャーノンに花束を」を書いたとき、アイザック・アシモフに
「どうしてこんな作品が書けたんですか?」と訊かれて
「さあ…私にもわからないんですよ。誰か教えてくれませんかね?」と答えたという話は有名ですが、
僕にとってもそんな作品です。
なんでこんな話が書けたのか、いまだにわからないんですよ。
タイトルは大好きなPassion Pitの曲からとりました。
BGM:Sleepyheads/Passion Pit
散歩者
叙述の妙、というやつをやりたかったんですね。
これはSFじゃないんですが、奇妙な後味の残る小説ではあります。
英文タイトルの「Walking With」っていうのがすごく気に入っています。
BGM:(恋は)百年戦争/相対性理論
朝子の鱗
小説内でも言及していますが、手塚治虫の「ブラックジャック」へのオマージュです。
主人公は何もしません。
全く何もしないまま、最後まで物語は淡々と続きます。
最後の2行は、自分にとっても一番忘れられない言葉になりました。
BGM:ロストシー/Split End
安田君
人生で初めて、文学の賞(某携帯小説賞の佳作入選ですが)をいただいた作品です。
その後ホームページに載せていたこの作品を見た大阪の若い女の子たちが、pyunというミニコミ誌に作品を載せませんか、と言ってくれて、
これがそのあとの創作につながっていきます。
忘れられない小説です。
ちなみに、いろんな人に言っているのですが、文中に出てくる「ガンダムの三話に出てくるジオンの軍人みたいな人」という言葉は適当に書いたのですが、ガデムさんという本当に寺田農に似た人が出てくるので、びっくりした記憶があります。
SFじゃないのですが、第一作品集に載せないわけにはいかなかったので。
BGM:Birthday/くるり
ニーナのために
原型は以前に書いた小説です。もっと長い小説だったのですが、書くたびに短くなりました。
胡蝶之夢、という言葉を再現したくて書きました。
夢の中の女を愛してしまったのか、女の夢の中にいるのが自分なのか。
この小説を書いている間、ずっとart-schoolを聴いていました。
「ニーナの為に」という題名はその曲からとりました。
BGM:ニーナの為に/art-school
十二月のレノン
「高い城の男」へのオマージュとして作った作品です。
突っ込みどころが多すぎて、本当にこんな結末が成立するのか自分でも検証はしていないのですが。
好き嫌いも意見が分かれる作品ですが、大好きな作品です。
BGM:レノンレノン/モーサムトーンベンダー
バスに乗る前に
この小説の最初のタイトルは「君の料理」でした。
そうです。ミイラズの曲のタイトルからとりました。
だから主人公の奥さんはからあげやなすの素揚げを作るんですね。
この小説はもともと「戦争と人間」という長い小説の一部になるはずでした。悩みながら先へ進めなくて、今も止まったままです。
ただ、このテーマはずっと持っているものなので、この後もこんな小説が書かれることになると思います。
BGM;君の料理/ミイラズ
おわりに
こうやって今読み返すと、いろいろ変な部分もある小説なのですが、
やっぱり俺、SF好きだな、と思いました。
良くも悪くも、これからもこんな感じで続いていくのかな、と思っています。
あなたに届きますように。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?