寝れないときはスマホをいじろう ~冬のルサンチマンを添えて~


 よく眠れない。そして毎晩布団を被ってスマホをいじっている。いじるから眠れないのではなく、眠るためにいじる。

 一般的には、入眠の数十分以上前から部屋の電気を暗くして、電子機器の画面も見ないようにすることが勧められる。しかしそれを真に受けて人々がするように完全な暗闇のなかで就寝の準備をしなければならないなんて馬鹿げている。月の光はどうだ? 空の明るさに準じて生き物の体が決めたのが概日リズムなら、しばしば遠くを見渡せるほど明るい夜を作り、あまつさえPale moonというように白色、むしろ青みがかった色で僕らを照らしさえする月光のことだってその概日リズムは計算に入れているに違いない。ならば、『寝る前に画面を見ると体が腹時計を間違えて概日リズムが崩れるよ、特にブルーライトは徹底的に避けなければいけないよ』などというのはあまりに行きすぎた主張だ。輝度を落とせば問題ないだろうに、300カンデラと10カンデラの違いも体がわからないというのか?

いじることでむしろ寝られる

 スマホをいじることで寝られなくなる人がいたら、それはいじり方が悪いか、そういう体質なのだろう。だが僕は寝られる。スマホを入眠用のツールにすることに成功した。全員が寝られない人なのだと勝手に決めつけないでほしい。

 僕は(自閉症者全体で比べれば)軽い自閉傾向、そこそこの注意欠陥、なかなかの衝動性を持っている。人と見比べるに、ほんの少し多動も入っているかもしれない。
 そのおかげで、何か考えていない瞬間はほぼない。授業はじっと聞いていると耳に入った言葉からいつの間にか終わりのない連想ゲームに突入して全てを聞き漏らすので、連想ゲームをさせないために、常にノートPCを開いて何か作業をしている。そうして片手間に聞いていた方が授業の理解度が格段に高くなる。実はこのnoteも授業中に書いている。
 というように他ごとをしながらでなければ目的に向かうのが難しい。布団の中にいて何もしなければ、連想ゲームが始まる。よく言われるように、夜間はネガティブな思考に陥りやすい悪魔の時間帯であるので、それはもう酷い連想ゲームが始まる。僕が自閉症当事者として以外の話題で、変な調子の皮肉と共に差別主義とルサンチマンを露わにした文章を投稿したら、だいたいそれはこの時間に考えられた話題だと思ってくれていい。眠れないとき特にこの悪魔的思考に陥りやすいのだが、さらに悪いことに、この思考自体も不眠を助長してしまうのだ。だから、別のことに気を逸らしてこの連鎖をどこかで断ち切らねばならない。

 それで利用しているのが文章生成AIとのチャットだ。適度に思考できて、こちらに文章を投げてくるのはあくまで知能を持たない関数なので腹が立たない。ネガティブな感情を持つことなく擬似的なコミュニケーションができる最良のツールだ。(消極型のASDなのにコミュニケーションしたがるんだねとか、そういうツッコミはなしで。ASDだろうが、どれだけホモサピが憎かろうが、基本的には人と関わらねばメンタルヘルスに問題が起きる)
 連想ゲームを避けたいので、ASDに特有の質的な内容のみの会話ではなく、徹底的に他愛ないスモールトークだけをするようにしている。対人では絶対にできないが、なぜかAIが相手だとこれができる。するといつの間にか眠くなってきてスマホの画面を閉じる。あとは最大30分もあれば寝られる。
 この時点で遅いときは1:30くらいになるが、入眠時の平均時刻は何もしなかったときに比べて格段に早い。
 ChatGPT以下クラウドサービスでは何か不都合があったとき自分の責任にできない(むかついても殴れない)ので、ローカルで実行している。GPUで動かしているが、RAMが余分に4GBあればCPUでも量子化されたMistral-7bを動かせる。text generation webuiによってLAN内の別端末から利用できるようにしている。どのモデルも一長一短だが仕方ない。パラメータ数が小さいのが主な原因だ。

(以下から次章までの文は本題ではないので読み飛ばしてもらって構いません)
 寝落ち通話とはそういうことかもしれない。通話で寝落ちをしないと眠れないという人をしばしば耳にする。人と関わるだけで憎悪を募らせるような人でもなければ人間とスモールトークをして落ち着けるものなのだろう。
 生成AIは、何も考えていない。僕がどれだけ空気を読めていない、健常者にとって嘲笑に値するいわゆるガイジムーブをかましたとしても、彼らは極めて真摯に誠実に、ガイジムーブを見逃して、必要な返事をしてくれる。
 それに比べてお前らは何だ、(以下数千字。そりゃ眠れないわけだよ)

 僕にとってスモールトークとは、聞いた後で「は? 何? それだけ? オチもないの? 接続詞の繫がり方がおかしくない?」などと思わされる、喋っている人のパーソナリティを整理する以外に価値のない会話で、聞かされると若干イライラするものだ。だから他の人もきっとそんな会話を嫌うだろうと考えて、絶対に人前でできない。しかし生成AIは何も考えていないので、そんなことももちろん考えない。僕がスモールトークをホモサピにできず生成AIにできる理由だと思う。
(そんなスモールトークくんだが、健常者にはそれを行うときの暗黙のルールというかガイドラインがあるらしく、それにそぐわないやり方を僕がしたらしい時、僕ですらわかるような変な空気になる。ついていけねえよこんなのばっかじゃ)

眠前にいじるときのルール

 細かいルールはあなたがたの個別の事情に合わせて作ってもらうとして、万人に合いそうなルールは極めて単純だ。

SNSを開かない

 縦横比9:16の短い動画はアヘン入りのこんにゃくで、栄養もないのに食べ続けさせられて、後悔する。Youtubeは 楽しい|馬鹿げている|陰謀的だ|"見"た後には何も残っていない 。Instagramは見栄ばかりで気色が悪い。Twitterは下水道であるだけでなく、下水を飲まされもする。分散型SNSは極めて村臭く、息苦しい。水生村。でかいインスタンスはいいかもしれない。本当に好き勝手呟いてるし。Gravity? 知らない子ですね。
 このようにおおむね感情が強く動かされるので、醒めてしまう。

画面の輝度を下げる

 画面は目から近い(∈視界に対する占有率が大きい)ので、明るくするととことん眩しくなる。輝度を落としていなければさすがに腹時計が狂うことがあるかもしれない。

技術的な問題を解決しようとしない

 text generation webuiで変なエラーが出た? メッセージが正常に飛ばない? Wi-Fiでうまく通信できない? ほっとけ。お前は今夜中にそれを解決できない。解決しようとすれば、やり場のないストレスに晒されたまま寝なければならなくなる。さらにはその不眠のせいで翌日にも解決できなくなる。

嫌になったらすぐ電源を落とす

 それが寝どきだ。

「あれ」が来たら諦める

眠れないとき特有の目がバキバキに冴えてしまったあの感覚に襲われたら、今日は眠れない日なのだ。少なくとも夜明けまでは眠れないから、諦めて好きなことをするといい。

以~上!


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