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疎遠になった君をどうしてもマジミラに誘いたい手紙

マジミラ最高だった。
めっちゃ泣いた。
陳腐な言葉しか出てこない。
だって、ぜんぶよかった。

マジミラっていうのはマジカルミライの略称で、クリプトン社ボーカロイドのライブと、関連グッズ販売などの企画展を併催するイベントのこと。つまり、ボカロのライブと物販。

ボカロといえば初音ミク。
稀代のバーチャル・シンガー。

「え、初音ミク…? 生の声が聞けるわけでもないのに、ライブ行く意味ある?」

マジミラ参加者がよくかけられる言葉。たぶん第1位。しらんけど。

いやわかるよ、その気持ち。
めちゃめちゃわかる。
わたしもそう思ってた。

でもさ、ほら。
ディズニーランド行って、ミッキーの声が生じゃないから楽しめないことなんてなくない? そういうかんじ。行けばわかる。
ディズニー好きじゃないひとは、USJに置き換えてもらっていい。どっちも興味ないひとは、うーんとそうだなぁ、行けばわかるよ。

ライブの魅力って何だろう。
調整されてない生声が聴けること?
アクシデントがあること?
目が合うかもしれないこと?

初音ミクはその願いをどれも叶えてくれない。
彼女は調整通りに音を外さないし、
どれだけ速い歌詞も間違えないし、
ダンスの振り付けが遅れることもない。
どうしたって目が合うこともない。
万が一にも、絶対触れ合えない。
彼女はずっとガラスの向こうにいる。
だから初音ミクに好意を持っているひとたちさえ、ライブに行く意味が分からないんだと思う。

だけど、それでも言えるよ。

マジミラ最高だった。
みんな本当に生きてた。
ステージが昇降するの最高だった。
客席がチラ見えするサイドモニター最高すぎて絶対泣くよ。
ていうか美少女と美女と美男子しかいない。美の結晶。美しいは正義。最高。
そもそも声がいい。そりゃそう。自明の理。
そしてなによりセットリストが最高。これは譲れない。最高of最高。

で。考えてたんだよね。
どうやったら彼女は人間に近付けるんだろう?
言い換えると、さらに生きてるように見せるにはどうすればいいんだろう?

まずさ、息切れしないのが機械的に見えるのかも。連続で何曲歌っても、呼吸が乱れないんだよ。

MCのときに、「疲れたよね、みんな座ってね」って客席を気遣ってみせるのはどうだろう。こっちに関心があると、人間らしくないかな?

幕間がないから、たぶん水を一口も飲んでないんだよね。敢えて舞台上にペットボトル置いて、飲むのを見せる演出ってありがちでしょ?

曲と曲の間に、深呼吸するとかどう?
次の曲に意気込むかんじを演出できそうだと思う。わかんないけど。

あ。気づいた?
そうなんだよ。
ライブね、ノンストップなの。

彼女が止まらないから、客も止まれない。
2時間立ちっぱなし、ペンラ振りっぱなし。もし声出せたら、チンパンジーみたいになっちゃって、喉も潰れると思う。

「マジミラは1ヶ月前から筋トレが必要」と言っていた猛者までいるんだ。
「マジミラ翌日は背中が鉄板になる」と言っていたへなちょこもいるけど。

あのね、本当のところ。
わたし結局、
初音ミクに人間らしさなんて求めてないんだ。

完璧なあの子。
完璧だから憧れて、
完璧だから距離をおいた。
でもあの子は、完璧なんかじゃない。

本当は不器用だったり、
寂しがり屋だったり、
欠点もあるんだ。
完璧に見えるのは、彼女と彼女を支える人たちが努力し続けているから。

ライブって、努力の軌跡を観に行くんだと思う。

歌詞を間違える、
振り付けがトぶ、
リズムがズレる、
それにファンが「おっ」て感じるのは、
それこそが努力の過程だからだ。

ミクにはそれがない。
だから、ライブに意味を見出せない。
君もそう思ってるんじゃないかな。
だけど本当はちがう。

昔のミクを知ってる君なら、
絶対に、彼女の努力がわかる。

正直、ボーカロイドが嫌いな人はどうでもいい。
ひとの好きなものを盛大に貶して嘲笑う人を説得する気なんか、サラサラない。
もうかなり減っただろうけど、バーチャルアイドルのファンを精神異常者だとか歪んだ性癖だとか言う人とも、距離を詰める気はない。
相容れない人たちはいるものだ。

だけど、君はちがう。
君はミクを愛していた。
そのことを、わたしだけが覚えている。

マジミラは同窓会だ。
今年のマジミラは特にそうだった。

あの日有線イヤホンを分け合った君、
競うように良曲を探し合った君、
新曲予告の10分前から全裸待機した君、
生放送のために隠れて夜更かしした君、
弾丸のようにコメントを書き込んだ君、
カラオケでは必ずJOYSOUNDだった君、
ゲーセンで何クレもパフェを粘った君、
マジミラに来てほしい。
十年ぶりに会いたいんだ。

彼女が待ってる。


初音ミクが、待ってるんだ。

君にとって、
初音ミクは過去の人かもしれない。

鏡音レンも、
鏡音リンも、
巡音ルカも、
MEIKOも、
KAITOも、
青春の1ページに過ぎないんだろう。

でも、それでも言うよ。
マジカルミライに来てほしい。
今年じゃなくてもいい。
来年でも、再来年でもいい。
君をずっと待ってる。



ミライで会おう。


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