ガン患者へのことば

坂本龍一の闘病記が高い注目を浴びている。2020年に直腸がんの転移をみつけ、6回の手術を受けているという。
NYの病院にかかっていた坂本さんが、仕事で帰国したときに、こんな対応があったらしい。

日本の病院で最初に診てくださった腫瘍内科の先生には、『何もしなければ余命半年ですね』と、はっきり告げられました。かつ、既に放射線治療で細胞がダメージを受けているので、もうこれ以上同じ治療はできないと。加えて彼は、『強い抗ガン剤を使い、苦しい化学療法を行っても、5年の生存率は50%です』と言います。きっとそれは、統計に基づいた客観的な数字なのでしょう。
 でも、仮にエビデンスを示したとしても、患者に対しての言い方ってもんがあるだろう、と正直頭にきてしまいました。こちらに希望を与えないような悲観的な断定をされ、ショックで落ち込んでしまった。有名な先生だと聞きましたが、ぼくとは相性が悪いのかもしれないと思いました」
\『新潮』7月号

母が通う、J医科大でも同じことが起こった。
スキルスの胃がんで、ステージ4という診断がついていたが、

「手術はできないです。まあこのままだと可哀そうだから、抗がん剤も検討しようということです。」

進行が早ければ、数週間の命ということもあり得る。「末期ですから、末期」とまで口走った。この女医は、入院当初から、「患者に希望を与えない」ような言葉の選び方をする人だった。
月に1回の診察でも、なんらかのストレスを患者や家族に与え続けていて、それに気づかない様子だ。この外科医は30代だと思うが、なにか大事なものが欠落しているように思える。
一方、抗がん剤を担当する腫瘍内科の医師は、「やっかいな病気だけど、なんとか頑張りたいです」「初対面なのに、こんな話をしてごめんなさい」と丁寧に言葉を選びながら、診察してくれた。
医療の手前で、患者を殺す医師もいれば、こんな風に励ましてくれる医師もいる。

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