ダイソーまで散歩

帰省する奥さんの荷物を持って、駅まで送り届けると、さっきから目の端で気になっていた、目の見えない人に声をかけた。
「どちらにいらっしゃるんですか」って。
聞くと、ダイソーがあると聞いたからそこに行きたいという。
僕も「ちょうど用があるんですよ」と答えて、一緒に行くことになった。
小柄で年配の人は、「あら、ラッキー」とつぶやくと、ひょいと身軽に僕の右側に位置を変えて、腕をとった。そして、早足で歩き始める。
「山歩きでなれてるもんだから、早くても大丈夫よ」と言いながら、どんどん進んでいく。
ダイソーは、駅から割と歩くので、自力でそこまでいくのはけっこう大変そうだ。
山歩きで「もしもの時」に使えそうな、アルミのシートが欲しいという。
店の前につくと、急な階段があった。「階段も慣れてるの」と言いながら白杖をコツンとあててさっと降りていく。
狭い店内の棚に、何度も脛をぶつけると「今度は、後ろについていくから」と言って、僕のリュックを掴んだ。

店員に、アルミシートの場所を聞くと、「ポンチョ型」しか売ってないという。形状を説明して、袋を手渡すとしばらく考えてから、2つ買うという。
横に陳列してあった、掌サイズのカッパや、軽い水筒のことなども伝えて(結局今日はアルミポンチョだけにした)一緒にレジまで行く。

あいにくすべてセルフレジだ。画面を見ながら、自分でスキャンして買わないと行けない。1人横で見張っている店員がこんなときはさっと手助けをするのだろうか?
お財布から取り出して掌に載せた小銭を220円取って、レジに入れた。
札を入れる場所、小銭が出てくる場所・・見えててもわかりずらい。
自分の買い物はすぐにすむからと伝えて、5分くらい待ってもらった。
何を買おうか迷ったが、自動点灯するLEDライトを掴んで、会計をすますと、一緒に近所の図書館まで移動することにした。
「若い人に親切にされて・・」というので、50歳であるというと、「でも若く見えるのね」と言う。返事に困ってると、勤め先のことや平日に休みを取っていることなど、説明しながら目的地に着いた。
「今日は本当によかった。お大事にしてね。」と頭をさげる女性に、またお会いできるかもしれませんね、と言いながら、背中を見送った。

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