月の十字架
「月の十字架」
むかしむかし月の中に黒い十字があった
それは地球の覚者が無惨にも犠牲になった時のあの十字架とおなじようなものだった
犠牲とか、残酷さとか、暴力とか
そこまでして証明しなければならないなにか、とか、
そんなものたちが月に真っ黒な十字を押し付けていった
そのくせ、月は、月の十字から、命が生まれるのだとか、まことしやかにあがめられたりしていた
長い時がたちある日のこと、、、
サイテーだなおまえたち!
と言ったかどうか知らないが、月は思い切りブルブルっと身震いをした
すると、重くて黒い十字架は見事に木っ端微塵に飛び散って
細かく細かく細かくなっていき
地球の砂より細かくなっていき
最後は一粒一粒が「ふるえ」となって互いにぶつかって消滅したそうだ
それで、このように、十字に空いた穴から光が強く溢れているのだ
と、私は月の使者から教えてもらった
十字の四方に溢れる月の光は、すべての女性らしきものにつながっていて
だから、女はこんなにも輝くようになった
それはほんの数ヶ月前の話
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