父の誕生日🎂
父がまた誕生日を迎えた。
昔から、私や妹の誕生日なんて
一度も祝ってくれたことがないし、
「おめでとう」の言葉すらなかった。
それなのに、自分の誕生日が近づくと
「あの月が満月の頃、俺の誕生日だなぁ」
とか、
「あー、あと3日で俺も◯◯歳か」
と大声で呟いたり、
何かとアピールしてくる父だった。
今年も父の誕生日が近づいてきたので、
妹と相談して、結構良い品質の
カーディガンを贈ることにした。
施設に入っているので、
ここ最近の父の日や誕生日は
立て続けに5着ほどパジャマを贈った。
読書好きで、毎日本屋に立ち寄り
大きな本棚から溢れるほどの本を
持っていた父だけど、
身体の片側が麻痺してしまって以来
読書もぴたっとやめてしまい、
毎日毎日テレビだけを見て過ごしているらしい。
なので、プレゼントは衣類しか思いつかない。
カーディガンが手元に届いたらしく
父から早速電話があった。
「お誕生日おめでとう」と言うと、
無愛想な父も上機嫌な様子で、
「さっき届いたよ、ありがとう。
すごいあったかそうだなぁ」
ととても喜んでいた。
父はものすごく痩せてしまったので
空調の効いた施設内でもいつも寒がっている。
「大きめのXL選んだんだよ。
洗濯して縮んでも大丈夫でしょ」
と言うと、父はそうか、と言って
「じゃ」
とガチャ切りした。笑
要件が済むといつも秒で電話を切ってしまう。
しばらくしてまた電話があった。
「さっき着てみたよ。
ヘルパーさんたちに素敵なカーディガンですねって
褒められたよ」
「ほんと、よかったー!」
「じゃ」
またガチャ切り。笑
父があまりに嬉しそうなので、
なんだかすごくいいことをした気がした。
昔はいろんな面で
荒れ狂ったハリケーンのようだったけど、
倒れて施設に入ってからは特に
色々と苦労もあったろうし、
家に帰れない辛さもあると思う。
父にとって心穏やかな一年と
なりますように。