レインボーリボン メールマガジン 第105号 夢よ、力になれ
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■■ レインボーリボン メールマガジン 第105号
■■ 夢よ、力になれ
2022/12/31
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毎月末、NPO法人レインボーリボンの活動報告と、代表、緒方の思いをお伝えするメールマガジンです。
12月31日の年末号は、毎年ではないのですが、少し先の未来を描く「未来日記」をつけるようにしています。
これが何年後かの予測として、我ながら、けっこういい線いっている…と思っています。
例えばレインボーリボンを法人化した2014年の未来日記では、10年後の2024年、私は海外の被災地支援のためのオンライン会議を主宰していると書いています。
http://rainbow-ribbon-net.org/pta/mail-magazine-no9/
書いた当時はほとんどSF小説の感覚でしたが、コロナ禍を経た今、私たち市民活動家でも海外の人たちとのオンライン会議はもはや現実のものになりました。
翌年の2015年にはアフガニスタンで30年以上活動された中村哲医師を「心の灯台」として歩みたいと書き、
http://rainbow-ribbon-net.org/mailmagazine/mail-magazine-no21/
その中村医師が凶弾に倒れた2019年には「遺志ではなく、こころに生きる中村哲先生の意志として」と題して、再び2014年の原点を胸に刻みました。
http://rainbow-ribbon-net.org/mailmagazine/mail-no69/
あれから4年。中村哲先生の意志を継ぐ「ペシャワール会」の会員は何万人も増えているといいます。
2017年の未来日記では、活動拠点である葛飾区で「子どもの命と人権を守る総合支援センター」が設置され、区の子育て支援や福祉の担当部署、教育委員会、社会福祉協議会、それに我々民間団体が連携して動いていると書いています。
http://rainbow-ribbon-net.org/mailmagazine/mail-magazine-no45/
これも、いよいよ現実になりつつあります。
コロナ禍で行政、学校の機能がピタリと止まってしまった2020年、こども食堂を運営してきた私たちは必死に動き続けました。この3年、とても大変だったけど、行政にできないことをやりながら、行政が本来の機能を発揮することが子どもの福祉にとっていかに有効か、いかに必要かということも分かったし、行政からの信頼も得て、実際に協働して取り組んだ困難ケースもありました。
「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」と行政、社協との連携を図る仕組みが今、具体的に動き出しています。
「夢」は言葉にすることで現実になる…。
祈りも込めて、今年の未来日記は10数年後のある日、フランスの地方都市と日本の東京を結ぶ、ある「オンライン面接」会場を描きます。
☆☆☆ 203×年 オンライン面接 フランス⇔日本 ☆☆☆
面接官 それでは、コッファ・ボウイ―さん、NPO法人ブルー・コンティネンの職員採用面接を始めます。
コッファ はい、よろしくお願いいたします。
面接官 まず、当団体の職員になりたいと思った動機をお聞かせください。
コッファ はい。国境、文化の違いを越えて、子どもや女性をはじめ、誰もが幸せな人生を送るための社会資源を世界に平準化させるというブルー・コンティネンのミッションに共鳴したからです。
私は8才まで日本で暮らしていました。日本では最低限度の生活水準を保障する福祉制度や公教育サービスの恩恵を受け、両親と弟たちと、貧しいながらも幸せな生活を送っておりました。
私が8才になった年、アフリカのある国の大使館に勤務していた父が職を失い、家族で帰国することになりました。
母国に帰ってから1年もしないうちに、父は病気で亡くなり、弟は病気がきっかけで体に障がいが残ってしまいました。お金がなくて病院に行くことができず、十分な食事もできなかったからです。
貧困によって命、生活が奪われる現実に直面し、私は混乱し、絶望しました。
世界のどこに生まれても、どこで成長しても、十分な栄養と医療と教育を享受し、能力を生かし、美しいものや楽しいことを感じ、経験しながら人生を歩む、そんな世界をつくることが私の幼い頃からの夢なのです。
面接官 アフリカの貧しい国に生まれ、母国を発展させようと政治・経済界で活躍される方は多いですね。しかし、あなたはなぜ、日本のNPO法人に就職しようと?
コッファ 私が今日まで生きてこられたのは、日本の市民運動のおかげだからです。
私たちがアフリカに帰ったのは2022年です。それまで3年間、世界は新型コロナウィルスの流行という突然の災厄と懸命に闘っていたと母から聞きました。
日本でも母子家庭をはじめとした社会的弱者が困窮を強いられ、既存の福祉制度では救済が難しいケースが多かったそうです。その時に食料を配り、人々の疲れた心を癒し、このような緊急時でも誰も取り残さない社会の仕組みを作ろうと努力したのが、良心的な市民だったそうです。
その動きの中で、私たち家族も食料や学用品、弟のオムツなどを支給してもらいました。
アフリカに帰ってから、そのように支えてくれる人たちと遠く離れてしまったことが母にとって最大の悲劇でした。
アフリカは部族社会です。生まれた部族の中で、家父長的な男性を中心としたファミリーが支え合うのが一般的です。しかし母は幼くして実父を失い、養父母のもとで虐待され、満足な教育を受けることもなく、親子ほども年の離れた父の第3夫人として日本に渡りました。経済的に自立するための資源を何も持たないまま、子どもを連れて母国に戻ってきた母にできることは、無料アプリを使って日本の支援者に電話をかけ、泣くことだけでした。
私は学校にも行けず、食べるものもなく、これからどこでどうやって暮らすのか、父母がかみ合わない口論を延々と繰り返す様を目の当たりにする日々を、ただ茫然と過ごしていました。
日本の支援者は「子どもを連れてフランスに行きなさい」と口を酸っぱくして言っていたそうです。母の親戚がフランス国籍を取得してパリに住んでいました。しかし、母にとっては縁の薄い親戚を頼るには心理的抵抗があり、また「子どもは父方のファミリーのもの」という伝統的な価値観を脱するだけの自信もなかったのです。
しかし父が亡くなり、ようやく母はフランスに行く決意が固まったそうです。フランス行きの航空券は日本の支援者が援助してくれました。
信じられないことです。アフリカに帰る費用も、フランスに渡る費用も、母国の政府、大使館は一切支援してくれませんでした。日本の市民が、何の見返りも期待せずに寄付してくれたのです。
フランスでは教育費にほとんどお金がかかりません。私たちのような困難家庭に対しては、子どもが小さいうちから福祉ワーカーが寄り添い、学び、生活、文化のあらゆるサポートにつないでくれました。
面接官 なるほど。あなたの人生のきっかけを与えてくれたのが日本の市民だったということですね。
コッファ フランスに渡ってからも、私が日本語を忘れないようにと頻繁にオンラインで連絡をとってくれました。
血のつながりもない私になぜそんなに親切にしてくれるのかと訊いたことがあります。
「日本のママ」はこう答えました。
「私たちは2011年の大震災と原発事故を経験しているから。何が起きても子どもたちが生き延びることができるようにって考える。自分は明日死んじゃうかもしれないから、今日できることを精一杯、子どもたちのために生きようと思う」と。
面接官 3・11の東日本大震災の経験ですね。
コッファ それに「日本のママ」が直接経験したことじゃないけれど、ヒロシマ、ナガサキの経験も日本人の原体験なのだとも教えてくれました。
私が8才から10才になる頃、北朝鮮はミサイルを撃ち続けていました。ロシアはウクライナに侵攻していました。「ロシアが核兵器を使う可能性がある」という危機感から、世界中で「核兵器反対」の声が沸き起こりました。日本ではやはり市民が平和運動のビッグウエーブを起こし、結果的に核の使用を止めたのです。
日本の市民運動がなかったら、いま、人類は存続していなかったでしょう。
面接官 あなたの日本の市民運動に対するリスペクトはよく分かりました。しかし、我々はどちらかというと欧米にルーツをもつNGOの日本支部のような組織ですよ。
コッファ 欧米はアフリカを植民地支配し、奴隷貿易をし、経済的文化的収奪を繰り返してきました。しかし、アフリカが部族対立を脱却し、女性や子どもの人権を確立するためには欧米の民主主義を社会に根付かせるしかないと思うのです。
日本でも民主主義と平和主義、基本的人権を掲げた憲法について、アメリカの押し付けだと批判する声があることを知っています。しかし私が見た日本の民主主義は、他国から持ってきた民主主義ではなく、「日本のママ」たち、一般の市民が努力して作り上げている「地域の助け合い」でした。
アフリカにルーツを持つ私たちも、私たちの手で私たちの民主主義を作っていきたいのです。
☆☆☆ 203×年 オンライン面接はこれで終わります。 ☆☆☆
皆さま、よいお年をお迎えください。
(代表・緒方美穂子)
▼子どもの権利に関する連続講座(「かつしか子育てネットワーク」「かつしか子ども若者応援ネットワーク」「かつしか子ども食堂・居場所づくりネットワーク」の3つのネットワークが協力して「子どもの権利条約」を葛飾区に根付かせるために取り組んでいます。)
詳しくは↓
https://katsushika-kodomoshokudou.net/2022/12/30/3net-kouza/
◆わがまち楽習会 第2回「子どもを『お客さんにしない方法』」1月22日(日)10時~12時 立石地区センター別館 講師:林大介さん(子どもの権利条約ネットワーク事務局長)
受付フォーム:https://forms.gle/23G7YioEoD2iCzDu7
◆わがまち楽習会 第3回「子どもの権利について話そう」2月19日(日)14時~16時 立石地区センター別館
受付フォーム:https://forms.gle/uPRVAwjqhhVEL29Y6
◆3つのネットワーク企画 映画「ゆめパのじかん」上映会 3月21日(火・祝)10:30~ 映画90分 参加費:1000円(中学生以下無料) 青戸地区センター
受付フォーム:
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdAqgz7UY-UC_VNFkbcXTbNyoc4nzP7SRKCfTJYxoqJMTv6HQ/viewform
◆わがまち楽習会 第4回「『子どもの権利条例』と子ども夢パーク」 3月21日(火・祝) 13時30分~15時30分 青戸地区センター 講師:山田雅太さん(子どもの権利フォーラム 顧問)
受付開始は2月17日午前10時から
▼区民大学講座「生きづらさを抱える子どもを地域で支えるには〜葛飾の子どもの声から考える〜」
日時 1月29日(日)午後2時から4時
貧困、虐待、発達障害、いじめ、社会的マイノリティなどを背景にし、社会からの支えを十分に受けられず、生きづらさを抱える子どもたち。葛飾の子どもたちのリアルな声から、生きづらさを抱える子どもを地域で支えることについて一緒に考えてみませんか。
詳細は下記リンクにてご確認ください。
https://www.city.katsushika.lg.jp/event/1000106/1030458.html
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