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人生初、ミュージカル
覚えるのが苦手な私は、台詞がどうしても覚えられなかった。夜中に何度も繰り返してみるけれど、気づけば台本を枕にして寝落ちしている。自分のセリフが他人事みたいに浮遊して、どうやって掴めばいいのか分からなかった私は、ただただ繰り返すしかなかった。前日までカタコトで本当に主役なんてやめてしまおうかとまで思った。(そんなことできるわけないけど。笑)
ミュージカルの前夜、廃校の体育館は寒かった。
夜中の2時、天井の蛍光灯がかすかに明滅している。
みんな疲れていたけれど、練習は止まらなかった。みんなが必死で覚えてて、愛おしくて、頑張れ。って本気で思った。
私のダンスソロは、ミュージカルの中でも重要な場面だった。自分の動きが全体の流れを崩してしまうんじゃないかと、不安で仕方がなかった。
本番の前日は失敗するのが怖くて、日が昇るまで練習した。
ミュージカル当日はあっという間にきて、やっと、本番がはじまる。終わってしまうのが寂しいな。なんで考えていて、自分でも驚いた。
始まってすぐ、みんなでノリノリのダンスを踊るんだけど、私とあやほはノリノリで踊れない役で、悲しかった。でも、みんなが楽しそうなところを横からあやほと一緒に見てたのも、最高に幸せだったし、楽しかった。
みんなが本気で頑張ってたから、ミュージカルは順調に、あっという間に私のダンスソロ直前に。
みんなが名前を呼んでくれた。
その声は練習で耳に馴染んでいて、まるで毛布みたいに私を包み込んでくれた。
私は、みんなの声に安心してしまって、名前を呼ばれた瞬間、練習してきたダンスが全部どこかへ飛んでいった。寝ないで練習したことだって、もう何も覚えていないまま、体が勝手に動いて、夢中で踊った。
あの瞬間は、最高だったし、ずっと忘れないだろうな。一生懸命脚本を書いてくれたあなた、一緒に主役をしてくれたあなた、みんなのことを見守ってくれたあなた、ダンス苦手なのに必死に頑張ったあなた、みんなのダンスを朝までつきっきりで練習してたあなた、セリフを間違えないように片手が真っ黒になるほど必死だったあなた、本当にみんなのおかげでこんなにも素敵なミュージカルになったね。
ミュージカル班のみんなとさいっこうの思い出がつくれて幸せだ。
みんな、みんな、ありがとう。