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『東京嫌い』 私的帯コレ
note 同人誌『東京嫌い』が21本の連載を終えて一旦ゴールしたようなので、それぞれの作品にわたしが寄せた帯(Twitter のシェアコメント)をまとめておこうと思います。
Twitter ではもう順不同で思いつくままに書いていましたが、ここではマガジンでの掲載順に上から並べなおしました。300円買い切りという格安マガジンなので、文筆に興味のある人は買って損はないと思います。もし買おうか迷っている方はぜひこの帯コレを眺めて、最後の一押しに、してもらえたら嬉しいです。
東京は夜の七時
十年前の景色が残っていない東京。それは故郷になり得ない町。そんな町に生まれ、故郷を求めて北国へ移住したわたし。新たな地がホームになるには、まだ少し時間がかかりそうです。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 22, 2020
東京は夜の七時|岩間 洋介|https://t.co/68v4tIKN9L #note https://t.co/sFCfNTUccx
イーストウエスト(東京嫌い)
外から東京を嫌う人と東京で生まれて東京を嫌う人は「嫌い」のポイントが違う、ということを知った。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 27, 2020
イーストウエスト(東京嫌い)|まぶたゆりこ #note https://t.co/9STq4gq5G9
夜空に引き上げられる
東京を使いこなす。いい言葉だなあ。東京は複数の町がレイヤーになったような町。息詰まる空気を感じたらレイヤーを移動してみると案外居心地がいいかもしれない。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 27, 2020
夜空に引き上げられる|山羊メイル/tetsuya k @yagicowcow #note https://t.co/v5QTE2sKpy
2020 東京新サービス
まさかの、東京そのものを擬人化。でも「あんな顔もすればこんな顔もする」。それが東京のレイヤーだとすれば、表層に出てくるものが変わると違って見える。たしかに人のようだ。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 27, 2020
2020 東京新サービス|真巳 @mamiumi1 #note https://t.co/0CQVNxMrGB
わかり合わなきゃいけない症候群に囚われているわたしたちは
違うものが違ったまま一緒にいられるという意味では、東京はむしろそういう町だと思う。地方へ移住して感じる「よそ者」感は、よそ者で構成されている東京にはないものだった。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 27, 2020
わかり合わなきゃいけない症候群に囚われているわたしたちは|ナースあさみ @asami300765 #note https://t.co/rNH9MpJPch
とうきょうたろう
口だけがあるとうきょう。来るものは拒まない。とうきょうを好ましく思わないものには見向きもしない。飲まれた人は案外楽しくやっているかもしれないけれど残された者からは見えない。とうきょうは少し、黄泉の国に似ている。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 28, 2020
とうきょうたろう|ハネサエ. @puhico06 #note https://t.co/hdB3vzqPH0
東京嫌い?
とってもリアルな気持ちが伝わってくる。東京にはなんでもある。なんだってあるけれど、誰もがなんでも得られるわけではない。得られる人と得られない人の差も、東京にははっきり見える形で、ある。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 28, 2020
東京嫌い?|まるいがんも @kenihare #note https://t.co/vOxAuVileM
東京に降る雨
東京は何事につけ層が厚い。そのせいで逆に「自分がやらなくても誰か手を上げるだろう」層が多い。バケツリレーの最初の一人にとって「繋ぐよ」と手を上げてくれる人の存在は貴重なのだ。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 31, 2020
東京に降る雨|林伸次 @bar_bossa #note https://t.co/eXlDoxCysT
ひとくちの夜をすくって
うん。東京だ。一言も」東京」と書かずに東京を描いている。それになにより、作者名が伏せられていても誰が書いたかわかるほど滲み出る個性がすごい。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) October 30, 2020
ひとくちの夜をすくって|サトウ カエデ @nzkaede #note https://t.co/bUrKASh5UM
完璧で怠惰な、ありそうでなかった東京
どんな人生も選択の積み重ねだ。その選択肢の数は住んでいる場所によって異なる。選択肢の多い街には、選ばれなかった残骸の堆積も多い。かけちがったファスナーのズレは、ずっと後になって露見する。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 5, 2020
完璧で怠惰な、ありそうでなかった東京|teapot @klifelog #note https://t.co/lq4jrw3YYD
あたらしい別荘地
喫煙者がいて過密な東京が知らず知らずのうちに侵略を退けていた。禁煙が進み、ソーシャルディスタンシングが行き届いた東京は次に来た連中に侵略され、やがて地球人は彼らのペットとなる…
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 1, 2020
あたらしい別荘地|カワイミナミ @nami_hey_ #note https://t.co/fdjSOlfvoP
自由律俳句集 渋谷の広告がでかい
ひとつひとつ頷く。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 4, 2020
渋谷の広告はデカく、新宿のはどぎつく、五反田のはエロい。
東京のテレビはおもんないが地方でやってる番組のほとんどは東京のがそのままだ。
そして、意外と東京駅に行く用事は無い。
自由律俳句集 渋谷の広告がでかい|パスカ @freak575 #note https://t.co/EYOVhKT6jf
体温と同じ水
東京に流れる時間は、もともと住んでいる人と外からやってきた人では大きく異なる。外から来た人のコーヒーがゆっくり冷める間に、ずっと住んでいた人のコーヒーは冷え切っている。そのタイムベースの差は埋めがたい。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 3, 2020
体温と同じ水|こげちゃ丸 @Koge0_ozeki #note https://t.co/UMwVT22nvM
永久機関の住民
死体を外的な力で動かして生きているように見せるうちに、本当に生きていると錯覚してしまった町、東京。とっくに死んだまま動いている。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 4, 2020
このマガジンで初めて、本当に東京を「嫌った」作品ではないか。
永久機関の住民|Yuki/「東京嫌い」責任編集 @yukiganimata #note https://t.co/nFyaA0PMxn
2019年、9月28日。
東京の心拍数は速い。もしかしたらハムスターと同じくらい。東京は止まらない。上に乗っている人の事情などお構いなしに進む。大きな転換点さえ、あっという間に過ぎ去る。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 5, 2020
東京は永い命を持ったハムスターかもしれない。
2019年、9月28日。|志村優衣 @yui_shim2 #note https://t.co/qdCFfMikNu
あの日、あなたに会う前に
なんでもあるのはなんにもないのと紙一重。そう。山積みの服を前にしても明日のデートで着る服がないみたいに。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 6, 2020
なんだってできそうな気配がする町。
なんでもできることと、なんにもできないこともまた、紙一重。
あの日、あなたに会う前に|吉川愛歩 @ayumina0211 #note https://t.co/e4wTq2ovr2
遠い東京と息子の話
子どもの生きる場所は親によって決まる。親にはいろいろな事情がある。子はある程度の年齢まで、それについていくしかない。自分の住む場所は自分では選べない。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 7, 2020
まーちゃんの東京はどんなところだろう。東京嫌い…じゃないといいな。
遠い東京と息子の話|山里 將樹 #note https://t.co/xCU3ucpNBr
橙色に頬をぶたれる
華やかで煌びやかな東京の上澄み。そこに自分を合わせて東京になじんだつもりになっている人は、実は浮いている。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 8, 2020
本当の東京人は港区の底に沈殿する。タワーの橙色が露わにする上澄みに踊る粒子たちを、底から静かに見上げている。
橙色に頬をぶたれる|henzutsuu #note https://t.co/7PyFEaWg9V
上京消滅物語
「上京」にはかつて東京へ行くという以外に、わずかな憧れとある程度の不安、もしかしたら畏怖なども含まれていた。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 9, 2020
東京が単に首都であるだけの町になった今、「上京」は意味を失ったのかもしれない。
上京消滅物語|ふみぐら社 / 『東京嫌い』責任編集 @fumigura #note https://t.co/TcjcNvUcDo
放し飼いの羽ばたきに愛を
多層構造の町の端っこでは、しばしば別レイヤの住人と邂逅する。そこに感じる違和は時に越えがたい壁になる。狭い範囲に幾重にも重なる壁の総体のような町。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 10, 2020
遠いのは東京じゃない。別レイヤのあなたなんだ。
放し飼いの羽ばたきに愛を|下瀬ミチル @michiru_shimose #note https://t.co/LRBC1n88T2
始発列車
時間を置き去りにしたのか、時間に置き去りにされたのか、ハモニカ横丁は異界だ。怪異蠢くハモニカの奏でる音が始発列車に絡みつく。世界が目を覚ます頃眠りにつく者たちの子守歌。
— 涼雨 零音(すずさめ れいん) (@RSuzusame) November 11, 2020
それは東京のB面に刻まれた音かもしれない。
始発列車|吉玉サキ @saki_yoshidama #note https://t.co/tllrFhzLHv
以上、21作品。ここにまとめながらそれぞれ読み直してみたのだけれど、ものすごく厚いですね。熱いんじゃなくて厚い。とても幅広い書き手が集まってそれぞれの個性を発揮した作品を寄せている。note 同人誌というものの可能性を垣間見た気がしました。
わたしは4月にnote を始めて8か月目ですが、note には本当に優れた書き手が多くて驚かされ続けています。それがこうして一つにまとまったオムニバスとして読めるというのは、想像以上に楽しい経験でした。このマガジンは告知されてすぐに購入したのだけれど、そのときに期待したものよりもはるかに濃いものが読めました。
この同人誌マガジンで初めて知った方も多く、いくらでもすごいやつが出てくるゾ、と悟空のようにワクワクしています。
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