[掌編]Gのアネッロ

 汗だくになって目が覚めた。悪い夢を見ていたようだ。
「起きたか」
 傍らに立っていた友人が言った。
「うわ。おどかすな。どこから入ったんだ」
「何言ってる。試験は終了だ」
「え」
「安心しろ。成功したんだ。もうその姿でいなくていいんだ」
 そう言って彼は虫かごを取り出した。中には黒光りするあの虫が入っていた。
「ぎゃあ、ごk」
「おい本当に人間になっちまったんじゃないだろうな。ただのテストだぞ。君たちが人の姿で暮らすためのテストだ。あれほど嫌がっていたじゃないか。今、元の姿に戻してやるぞ」
「おい冗談はよせ。俺はずっと人間だぞ」
「そういう記憶を持ってないと暮らすのに支障があるからな」
「うそだ。やめてくれ。助けてくれ」
 這いながら視界が後退し、俺は虫かごの中に入ってしまった。自分がどんな姿をしているのか怖くて見られなかった。
「うわあ」

 汗だくになって目が覚めた。悪い夢を見ていたようだ。
「起きたか」

《了》

※この作品はTwitterで行われた「匿名超掌編コンテスト」に出品したものです。

ここから先は

0字

スタンダードプラン

¥300 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細

いただいたサポートはお茶代にしたり、他の人のサポートに回したりします。