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神様のついた嘘
気心の知れた仲間たちと挑んだ勝負だった。制限時間ギリギリで仲間たちも疲弊していた。
「一か八か、行くぞ」
僕は叫んだ。
トルテが弱体魔法を唱え始め、僕と仲間たちが走り込んだ。トルテの魔法が僕を追い越してゲート・キーパーの巨体をとらえる。直後、ジャンプした僕は回転しながらゲート・キーパーの腕を潜り抜け、甲冑の隙間に刃を叩きつけた。同時に仲間たちもゲート・キーパーの両足に切り込む。刃に蓄えられた電撃が甲冑の内側に走る。ゲート・キーパーの仮面の奥でどくろがおぞましい声を上げた。僕は刃を引き抜いて後退する。仲間たちも離れる。ゲート・キーパーは咆哮を上げながら光の粒になり、空へと消えて行った。
「やったわね、ハミル」
駆け寄ってきたトルテが僕の耳元で言った。
◇
「んー」
僕は椅子の背もたれに体重を預けて伸びをした。夜ごと進めていたオンラインゲーム。そのエピソードのボスであるゲート・キーパーをやっと倒すことができた。仲間たちにチャットを送って僕はベッドにもぐりこんだ。
朝、目覚ましよりも先に電話が鳴って僕は目を覚ました。だれだこんな朝早くに。スマートフォンの画面には「非通知設定」と出ていた。僕は布団をかぶったまま電話に出た。
「もしもし」
「もしもし、ハミル?」
女の子の声だ。ハミルはゲーム内での僕の名前だ。本当の名前は美晴。電話番号を教えたゲーム仲間なんていたかな、とぼんやり考えていると相手が言った。
「わたし。トルテよ」
僕は一気に目が覚めてベッドの上で体を起こしていた。トルテはゲームの中だけのキャラクタだ。そのトルテから電話?
「だれだって?」
「トルテだってば。相談したいことがあるの。来てくれる?」
僕はデスクの上で沈黙しているパソコンを眺めた。昨夜ゲームからログアウトして電源を落とした状態のままだ。
「相談したいことってなに?」
「世界のこと。わたし気付いたのよ。この世界の本当の敵がだれか」
[続く](800文字)
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