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映画館に行く

 もう二十年ほど、ほとんど毎週映画館に行っている。毎週映画館に行くと言うと、多くの人に驚かれる。すごいですね、と言われたりする。でも、完全に毎週映画館へ行って映画を見たとしても、年間50本程度なのだ。僕の周囲には、年間100~130本ぐらいの映画を映画館で見ている人が多い。そのため、毎週映画館に行っている僕でさえ、彼らの中では「少ない方」なのである。「あれ見た?」みたいな話が飛び交うのだが、その半分ぐらいは「なにそれ?」というレベルで、見たとか見てないとか以前に、知りもしない作品だったりする。そういう映画好きの人たちに囲まれているのでいろいろな感覚がマヒしてくるのだが、週に一度という程度であっても、そのぐらい映画館が日常になっている人は少数派なのだ。

 週に一度、年間50本程度の映画を映画館で見ている僕は、当然ながら映画が好きだ。映画が好きだと自分で意識したのは小学校一年生のときである。よく覚えている。スターウォーズの一作目、エピソード4が初めてテレビで放映されたとき、まだ幼かった僕は「もう寝る時間だから」とその放送を見せてもらえず、後日、近所で唯一ビデオデッキを持っていた家に出かけて行って見せてもらった。ただ、この時は近所中の子どもが集まって見せてもらうみたいな形で、誰一人スターウォーズ等に興味はなく、大騒ぎで映画を見るどころではなかった。僕は映画ひとつおとなしく見られないガキどもを激しく嫌悪し、近所の子ども全員が嫌いになった。
 はっきり言って、この時、うちの親は「今日だけ特別」を発動して僕にスターウォーズの放送を見せるべきだったと思う。

 この、近所のガキどもがうるさすぎてまともに見られなかった、死ぬほどストレスが溜まったスターウォーズ体験が、大きく僕に影響を及ぼした。断片しか知らない異国の映画は僕の中であることないことを付与されて得体のしれない何かに変化し、それを作ったジョージ・ルーカスというひげもじゃのおっさん(ルーカスの姿をどこで知ったのかは覚えていない)こそが目指すべきものとして君臨した。

 その後僕は小学校のなんらかのあれで、将来の夢に「ジョージ・ルーカス」と書き、先生に「映画監督」と修正された。でも僕がなりたかったのはヒゲを含めたジョージ・ルーカスそのものであり、映画監督という職種だか肩書だかなんだかしらないが、そんなものではなかったのであった。

 小学生の間には、たぶん数えるほどしか映画館に行っていない。このスターウォーズ事件のあと、「2010年」という映画を父と見に行った。たぶんこれが初映画館体験だった。あとはほとんど覚えておらず、小学校六年生のときに、父と、母方の祖父(父から見ると義父)と僕と3人で、「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」を見に行った。奇しくもこれは父子を描いた映画であった。

 中学に上がると祖父(最後の聖戦を一緒に見た祖父)と二人で映画を見に行くことが増えた。「男はつらいよ」と「釣りバカ日誌」の同時上映は毎回見に行った。1990年代のこれらの作品はほぼ全部映画館で見ている。

 その後23歳で親元から離れて一人暮らしを始め、近所のシネコンへレイトショーを見に行く、というのが習慣化した。このころは週に一本などとも決めておらず、毎日のようにレイトショーに足を運んでいたこともあった。

 2006年に札幌へ移住し、移住したとたんに映画同人を作っているチームに参加した。そこのメンバーが、前述の年間100本以上映画館で見ている人たちである。僕はその中では見ている数が少ない方ではあるのだが、結構わけのわからない作品も見るので、数こそ少ないものの、それでも僕しか見ていない作品というのがあったりはする。

 2010年ごろから映画のコラムを書かせてもらっており、毎週映画館に行くうちの、月に2本分がこの仕事のものになった。もともと原稿の仕事があろうとなかろうと映画は見に行くのだが、そのうちの2本を、編集部と選んだ作品にしている。もとより僕は「見たくない映画」というのがないし、見てみて「面白くなかった」と思う映画もないので何ら苦にならない。

 映画は本当に好きだ。なるべく映画館で見たい。映画館という場所へ足を運び、開場するのを待ち、席に座ってからも映像が始まるのを待ち、予告編があったり広告があったりするのを眺めながら本編が始まるのを待つ。それもこれもみんな含めて、「映画を見る」という体験だと思う。

 もちろん好きな作品はディスクを買ったりもするし、配信サービスで映画を見ることもある。それでもなお、映画はやはり映画館に見に行きたい。時間効率とは天秤にかけることもできないような、なにかそういう魅力が映画館にはある。

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