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上海の思い出(2021年の下書きより)

2024.3.24
noteの下書きを見ていたら、2021年に書いた公開してないやつが出てきた。
当時自分が何を思ってこれを書いていたのか、なぜ公開しなかったのかは忘れたが、結構な熱量で書かれているので、そのまま公開してしまおうと思う。

私は肉まんが好きですが、あまり買って食べることはありません。
それは、「あの味を越えることはない」と分かっているからかもしれません。

コロナ禍で、海外へ気軽に行くことはできなくなってしまいました。
不思議なもので、行けなくなると、より行きたい気持ちが強くなります。
私はたまに、ある国へ行った時のことをぼんやりと思い出すのです。

それは、中国・上海です。
新型コロナウイルスが蔓延る前、2018年12月のことでした。

当時大学生だった私は、フリーペーパーを作るサークルに参加しており、
その取材合宿として赴いたのです。

初めての中国は衝撃的でした。

例えば、人と人とが会話する時の声のトーン。
私の感覚では怒鳴っている部類に入るような、とても大きな声で片方の人が話し、
喧嘩かな?と恐る恐る見てみると、もう片方の人も同じように声を張り上げて話す。
すると不思議と普通の会話に見える。
こんなことが何回かありました。

また、電車の通路などで人が道を塞いでいて、別の人が通ろうとしているとき、
私の日常だと塞いでいる人はよけるのが普通です。
でも、塞いでいる人は驚くことによけないのです。
ではどうするかというと、通る方の人はよけない人を押しのけたり、
踏んづけたりして通るのです。
そしてお互いに怒らないのでした。

このように中国では、なるほどこうするのもありなのか、と思うことばかりでした。
常識の違う人々を見るのは楽しいものです。


けれど、一番の衝撃は食べ物でした。

泊まっていた安いホテルの隣に、点心がいくつか売られている路面店がありました。
美味しそうな香りがたちこめ、食欲を刺激された私たちは店を覗いてみました。

看板には

・鮮肉大包
・豆沙大包

などとあり、写真と漢字からそれらが「肉まん」「あんまん」なのではないかと推測しました。
驚くべきはその値段でした。1つ2元、これは日本円に換算するとおよそ36円です!笑

あまりにも安いので少々不安でしたが、私は好奇心で肉まんを1つ頼んでみることにしました。
発音がわからないのでスマホのメモに「鮮肉大包」と打ち込んで見せてみました。

店員のお兄さんは「おー。」みたいな返事をして、すぐに渡してくれました。
そして二度目の驚き。手に取ってみるとそれは、あまりにも大きかったのです。
コンビニの肉まんの1.5倍はあるサイズでした。

「ガブ」
一気に頬張ったその瞬間、
「えっ?」
という声が出ました。

今まで食べた肉まんの味を遥かに超える美味しさだったからです。
まず、肉の量が多い。
そして味付け。一体何の調味料を入れているのか、というほど、
日本では食べたことがないような、激しいほどの旨味。

「うまいっ!うまいっ!!!」

一緒に買った仲間たちはみんな感動しながら、
夢中で肉まんを食べました。
たった36円でこの美食体験です。正直500円は払ってもいい味なのに。

すぐに他の商品もどんどん注文しました。
豆沙大包(あんまんのようなもの)も、焼き小籠包も、
とにかく全部ありえないくらい安く、ありえないくらい美味しかったです。

ホテル滞在中私たちは幾度となくこのお店を利用し、
離れる時には、「もう二度とこの味を食べられないかもしれない」と、
名残惜しさでいっぱいでした。

たった3年前のことですが、今となっては遠い昔のように感じます。
それくらいここ数年でいろいろ変わってしまったから。

けれど、病気が蔓延ろうと、国がどうなろうと、
暮らしている人々や食べ物、日常はまだそこにあるのです。

いつかまた、あの美味しい肉まんが食べたい。
淡々と自分の日常を過ごして、たまに自分と違う日常を覗き見るような、そんな生活がしたい。

そう思いながら、今日も一日を過ごすのでした。

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