発達障害を受け入れて(12)
治療薬のこと
治療薬の話はもっとあとにするつもりでしたが、最近になって成分が問題視されることになり、薬の新規使用が制限されそうだと聞きました。詳しいことは、私は医師でも薬剤師でもないのでわかりません。
現在服用している患者は急に手に入らなくなって困ることはないだろう、と言われているようです。
(娘はこのニュースを見てショックを受けてしまいましたから、少し話をして落ち着かせました)
娘が服用している発達障害の治療薬は大人用ですが、以前は子供用の薬しかなかったようです。
2012年に大人用の発達障害を治療するストラテラという新薬が発売になりました。
娘の担当医はこれを強く勧めてきました。発売直後で、まだ自分の患者の誰にも使用したことがない薬だということでしたので、私は服用に反対しました。
反対した理由は、医師の態度が一般の患者さんに対する姿勢よりも、自分の病院の看護師だからという甘えから娘に対して意見を押し付けているように感じたからです。それは親である私に対しても、同様でした。
もうひとつは、薬剤の成分に劇薬が含まれているからです。
しかし、それはきちんと計算されて作られて認可も下りた薬品であり、普通に服用していれば副反応より効果の方が望めるということでした。
医師に尋ねました。
その薬を生涯にわたって飲み続けなければならないのか?
医師は少し言葉を濁しましたが……。
「一生涯必要とは言わない。いつかやめられる時が来ると思うが、現在は日常生活に娘さんが困っている状態であり、今は必要と考える。この薬のおかげで社会復帰が望める」と言いましたから、娘は服用したいと言いました。
ところがこの薬を飲んだ患者を一人も診たことがない医師は「どんな副反応が出るかわからないからすぐに連絡が取れる近くで暮らしていてほしい」と言いました。当時、娘は病院を休職して実家(就職先とは何百キロも離れている)へ戻っていましたが、病院横のアパートはそのままにしてありました。そのアパートで薬の服用開始から数週間は病院へ通って様子を診せてほしいと言われました。確かに服用するなら、そうしてもらわなければ困りますが、一度家族で相談させてくれと医師に言いました。
娘はどうしてもその薬を飲んで社会復帰したいのだと泣いて訴えました。それはそうでしょう。それを飲みさえすれば普通に暮らせるなんて言われてしまえば……。
娘は体が弱くて、小さいころから随分と病院通いや入退院をしてきましたし、そんな強い薬を飲んで大丈夫なものか、心配でたまりません。私は他に立ち直る方法がないものかと思いましたが、本人が納得する治療をしないと良くならないだろう、とも思っていました。
それは例えば『本人が進学したいという学校を親の都合で変更させてしまったことで、卒業したとしても本人には意味がなかった』ような……。
本人が受けたいという治療法を(親であっても他者である)私が拒否して受けさせなかったために精神的に社会復帰できなくなるような危険を感じました。
泣きながら互いの意見を言い合って、結局ストラテラの服用を決め、娘の体調が一気に悪化することもあるのでという医師の頼みを聞いて、娘の部屋に泊まり込むことにしました。
結果的には、急激な変化はそれほどなく、私は自宅へ戻ることにしましたが、娘は慣れるまで血圧の乱高下による吐き気や、ホルモンバランスの崩れによる体調不良、食欲不振などを経験しました(発達障害の薬はホルモン剤だと聞きました)。
体調不良の改善策として投薬量を減らしていくと、娘の場合は一番少ない(中学生相当)量で効き目があるということがわかって、それからずっと薬の量は変わっていません。もう十年以上飲んでいます。(一緒に暮らしていて、最近多動の傾向が増えて、少し足りていない感じも受けます)
ストラテラは新薬でとても高い薬でした。病院が休職扱いにしてくれていたので、手当てがもらえたので助かりました。
精神障がい者手帳の交付を受けられたので、薬代を安くしていただいています。ジェネリックに変更して、現在はアトモキセチンという治療薬を服用しています。だいぶん安くなって効能は変わりません。