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3分で読めるレイルロオドのお話「むむむの失われた記憶」&『レイルロオド・マニアックス むむむ』
WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネームの方、前回更新で第17話の全部の公開となりました。
で、ネーム(全)公開の次の回には、いままででしたら『作劇How To』を書いていたのですが。
いまはアニメ『レヱル・ロマネスク2』
の放映直前期でございますので、作劇Howtoにかわり、第二期新規登場キャラクターたちの『レイルロオド・マニアックス』を書いていきたいと思います。
プロフィールと短いお話を、どなたにも無料でお読みいただけるコンテンツ。
詳細な過去エピソードとむむむの設定資料(画:田上俊介さん)とをメンバーシップ特典として公開しますので
もしもご興味お持ちくださいましたらチェックいただけますと幸いです。
ということで、記念すべき第一回は、一番書きやすそうな「むむむ」。
旧帝鉄D60型蒸気機関車D60 66専用レイルロオドの「むむむ」で書いていきたく存じます。
CVは楠木ともりさん!
読んでおけばアニメが更に面白くなること間違いないかと思いますんので、ぜひご笑覧ください!
■ むむむのプロフィール ■
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<製造年> 1954年 1927年D50 157専用レイルロオドとして製造。1954にD60 66に新生改造。
<出身> 河崎造船 兵湖工場製 /改造は濱待工場
<所属路線> くろがね鉄道 くろがね線(粉蔵-征橋-脳型-折尾-粉蔵の環状線)
<長所>論理思考・推理力に優れる。貨物機らしい粘り強さとすぐれた体力、耐久力を持ち、職務にも熱心。普通に優秀。
<短所>誰にも求められていないシーンでも、無意味な考察や無意味な推理をしてしまいがち。
探偵しぐさが好きすぎ。話が終わって部屋をでるタイミングでくるっと振り返り「ああ、XX氏。もうひとつだけよろしいですかな?」とかやりがち。
――「新生改造」という耳慣れぬ語をプロフィールに持つむむむ。
それがはたしてどんなものなのか、みなさん興味をおもちくださるものかと思いますので、短いお話はもったいぶらずに、そこを書きたく思います。
題して「むむむの失われた記憶」。
どなたにも無料でお楽しみいただけるお話となりますので、ぜひご一読ください。
■むむむ■
旧帝鉄D60 66専用レイルロオド。
現所属はくろがね鉄道。
貨物輸送の専門家だが、非常に高い探偵スキルもあわせもっている。
■「むむむの失われた記憶」■
(あらすじ)
最新の社会情勢を把握しておくため、常に情報収集をおこたらないむむむ。
「異世界転生もの」が流行っているという話題から、
むむむは自らに関するひとつの謎を、そっと明らかにするのです。
///
「はぁはぁふむふむ、こうしたものが最近の流行りなのですな」
異世界転生。
いままで全く触れたことがないジャンルでしたが――いや、なかなかに興味深い。
「マスターくんのおかげで常に流行の最先端に触れられる。
むむむは実に果報者ですな」
……なぜだか妙にマスターくんは照れくさそうでありますが、
いや、ここは誇っていただきたい。
どれだけ最先端のものに触れようと意識してみても、
所詮むむむは年季の入ったレイルロオド。
『これは新しい!』と思ったものが世間様では2周遅れだったり……ということも、
ざらにあったりいたしますので。
「転生。言い換えれば生まれ変わり」
ならばこうした話もあるいは、マスターくんの興味に刺さるものであるかもしれません。
「マスターくんは、『むむむが生まれ変わっているかもしれない』と知ったら――どうでしょう? 興味を抱かれますかな?」
ぶんぶんと、予想以上にこれは激しい反応です。
ならば――ふぅむ。
普段助けられている御礼になるかどうかもわかりませんが、話すだけは話すことにしてみましょう。
「むむむのD60 66。これが昔は、D50 157であったことを、マスターくんはご存知ですかな?」
ふるふる、意外そうに首がふられてしまいます。
むむむから見ればマスターくんは遥かに遥かに年下ですし……
この辺の歴史を知らないことも、まぁ当然なのかもしれません。
「大戦が終わりますと、戦時生産として大量生産されていたD50形は余剰するようになりました。
しかし、丙線――D50が主たる活躍の舞台としていた乙線よりも等級が低く、重い軸重には耐えられない線路を走れる貨物機は、
老朽化や牽引力不足によって、足りていないという状況でした」
そうなってくれば、行われることは自明です。
「よって、余剰しているD50の軸重を軽減する改造を加えた新しい蒸気機関車が生まれたのです。
それがD60――むむむの姉妹たちですな」
ふんふんとマスターくんがうなずきます。
大して興味なさそうに。
が――
この話はここからこそが本題なのです。
「D50がD60に改造されたとき、D50形のレイルロオドたちも同時に新生改造されたと――されています」
ピクっと、マスターくんの肩が目に見えて動きます。
左様、左様。
マスターくんとむむむとは、決して短くない付き合いなのに――
「けれどむむむは、D50形レイルロオドだったころの記憶を一切有していないのです」
――だから、マスターくんにも思い出話をしたことがない。
むむむの思い出話は全て、D60 66専用レイルロオドに、『新生改造』されて以降のものなのですから。
「マスターくんもご存知の通り、レイルロオドの――ことにタブレットの製造方法は秘中の秘であるといわれています」
D50からD60に新生改造されたとして。
タブレットを引き継いだのなら、それほど綺麗に記憶を消去できるものなのか。
いいや、そもそも――記憶消去の必要が、どれほど強くあるものなのか。
「マスターくんはいかが思われますかな? むむむは、D50形レイルロオドから新生改造されたものなのか。
あるいは、レイルロオドボディはそのままに、タブレットだけを新規のものといれかえたのか。
あるいはボディもタブレットもまるごと、新規のものとして製造されたのか」
マスターくんが考え込んで……やがておてあげのポーズを取ります。
そしてむむむに――
「いえいえ、むむむも答えを有しておりません。
この謎は――解き明かしたとて幸せにはなれそうもない謎ですからな」
完全に記憶が消去されたのだとしても。
ボディは完全に作動するのに、タブレットだけ廃棄されたレイルロオドがいるとしても。
ボディもタブレットも廃棄されたレイルロオドがいるとしても。
……謎を解き明かしたそのあとに残る味は、おそらく苦味だけでしょう。
「ゆえに、むむむは、この謎を放置するのです。
『あえて解かない謎』を抱えておくというのも、精神的に佳いものですし」
それに、それに。
ここが一番大事なところでありますが。
「――転生をしたその後に、マスターくんとふたり時間を重ね続けている」
じっと、マスターくんの目を見ます。
……頬を染められ視線をそらされてしまいましたが、それはそれでまたよろしいのものです。
「それがむむむの異世界ならば、元の世界など不要ですので」
;おしまい。
///
いかがでしょうか?
前述しましたとおり、
『むむむの過去エピソード』と設定画とはメンバーシップ特典となりますので、もしよろしければチェックいただけますと幸いです。
なお、むむむの登場予定はいまのところは立ってないWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』
どなたにも無償でご確認いただける0~7話のネームはこちらとなります。
よろしければどうぞ、あわせご笑覧ください。
(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)
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