世界の武勲艦 1 空母「イラストリアス」タラントを奇襲

◆空母先進国イギリス
 海戦の主力空母、しかし、その建造、保有そして運用には、莫大な資金と蓄積されたノウハウが必要である。世界には空母保有国はいくつかある。しかし実際に世界中で空母を戦力といえるだけ保有し、運用できる国は、実質的にアメリカしかない。しかし、ここ1世紀余の空母の歴史において、計り知れないほどの大きな足跡を残した国がある。イギリスである。
 イギリスはかつて大英帝国として、世界の七つの生みの支配者であった。その海洋支配のバックボーンとなったのが、世界中のどの国よりも強大で勇猛果敢な海軍であった。そしてまたその海軍は、先駆的で革新的でもあった。世界中の戦艦を一夜にして旧式化した戦艦「ドレッドノート」は、そのひとつの例である。空母という革新的な手段についてもそうであった。
 艦艇からの航空機の運用そのものは、世界各国で構想された。しかし、それが本格化されたのは第一次世界大戦中のイギリスにおいてであった。1914年イギリス海軍は、航空機運用艦として、「アーク・ロイヤル」を完成させたのだ。結果的に「アーク・ロイヤル」は水上機母艦となったが、最初の段階では早くも艦上から発進することが構想されていた。
 発進だけの機能を持つ艦として、1915年には「ベン・マイ・ケリー」が完成し、1917年には着艦甲板も持つ「フューリアス」が改装された。イギリス海軍はこうして一歩ずつだれも経験したことのない空母の階段を登り、ついに1918年には、現在の空母のような全通甲板を持つ空母「アーガス」を完成させたのである。
 その後ほどなくして、日本、アメリカも空母を保有することになるが、先駆者イギリスなくしては、その完成は何年も遅れたことだろう。そしてまた。イギリスは空母運用でも世界の先駆者であった。まさにそれを象徴するのが、空母「イラストリアス」によるタラント奇襲であった。

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