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三船栞子はミア・テイラーを解き放つ――アニガサキ2期9話「The Sky I Can't Reach」
こんにちは。かみなりひめです。
今週もまた涙なくては見られませんでしたね。
アニメ
ラブライブ!
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
2期第9話「The Sky I Can't Reach」
ミアと嵐珠が一気にまとめて同好会に加入し、
やっとニジガク大団円!と相成りましたね。
ふたりが抱えていた悩み自体は、
スクスタでのものと大して変化なしですが、
具体的な過激行動がなかった点を見れば、
栞子と同じであると言えそうです。
また、ミアに関して言えば、
璃奈に導かれて同好会への加入を決めるのも
スクスタと同じ流れでしたね。
ですが、アニガサキにおいては
ミアを解き放った人がもうひとりいるのです。
それこそ、何を隠そう
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三船栞子その人なのです。
1. 璃奈による導き
さて、2期9話を見た限りにおいて、
ミアを同好会へと導くのは璃奈の役目です。
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嵐珠に提供した新曲を拒絶されたミアを
追いかけてきた璃奈。
一緒にハンバーガーを食べながら、
ゆっくりミアの過去を紐解いていきます。
「テイラー家」という血縁に縛られ、
歌えないならば音楽において認められないと
自身の存在価値がないと思っているミア。
そんなミアに対して、璃奈はこう言います。
でも、ミアちゃんは今、ここにいるよね。ここは、ミアちゃんの居場所にならない? 私、ミアちゃんの歌、聴きたい。「ミア・テイラー」じゃなくて、ミアちゃんの歌が、聴きたいな。テイラー家がどんなものか、私は知らない。でも、歌が好きなら、その気持ちをなかったことにしないでほしい。ミアちゃんにもっと、楽しんでほしい。ここなら、きっとミアちゃんが望むものを叶えられる。
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そして、ミアの心の奥底に眠っていた
「歌いたい……歌いたいんだ!」という感情を
引き出すことに成功します。
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つまりは、璃奈はミアの話を傾聴しつつ、
対話によってミアを過去から解放したのです。
このような手法は精神分析の世界で見られ、
フロイトの「症例アンナ」が有名です。
なぜか水を飲むことができなかったアンナが
自身のトラウマの経緯を語り終えたその時、
水が飲めるようになっていました。
過去の苦い思い出を対話によって想起させ、
それによって克服の機を与えたのです。
これは、璃奈がミアにした行為に似ています。
そして、さらに言うのであれば、
アニガサキ1期6話において、璃奈も同じ方法で
自身の殻を破ることに成功していました。
かつての自分と同じように過去に囚われ、
そこから身動きができなくなっていたミア。
そんなミアの姿を看破し、
自分がされたのと同じ方法を用いて、
彼女を「歌うこと」へと導いていった。
璃奈こそ、ミアの導き手であったのです。
2. MVから見るミアと栞子
かつての自分と同じように悩むミアを、
かつての自分と同じように救い出した璃奈。
そして、空港から出立しようとする
嵐珠の前で、ライブを披露するミア。
そこで披露された曲こそが、
ミア・テイラー「stars we chase」
個人的には、star”s”である点や、
chaseの主語が"we"であることがホントに
エモエモのエモです。よく分かってる。
ですが、その話はいったん置いておいて、
以下のシーンを見てください。
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ミアが手をかけた鳥籠からは、
一羽の青い鳥が飛んでいきます。
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そして、その鳥が飛んだ方向を見ると、
立ちはだかる一枚のドアがありました。
胸に下げたカギでもってドアを開けると、
そこにはスクールアイドルの衣装をまとう
ミア自身の姿があったのです。
このMVの流れですが、
実は酷似しているものがあったのです。
三船栞子「EMOTION」
栞子の「EMOTION」も、途中から
ミアと同じようなストーリーを辿ります。
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本の間に挟まった鳥の羽根を発見し、
その本を開いてみることにした栞子。
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そこには、青い鳥の羽根が一枚と、
鍵のようなものが封入されていました。
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動かなくなってしまった時計を、
その鍵を挿して動かしてみると、
スクールアイドル・三船栞子の舞台が
一気に動き始めるのです。
このように、ミアと栞子のMVは、
それぞれストーリーの類似が確認できます。
しかし、それもそのはず。
栞子もまた、自身の辛い過去を乗り越え、
スクールアイドルを始める決心をした人物
であるからです。
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スクールアイドルをしていた姉・薫子の挫折を
目の当たりにしてしまった栞子は、そこから
自身の適性に応じて費用対効果が最も上がるような
努力が大事だと知ってしまったのでした。
それゆえ、スクールアイドルとなるよりも、
誰かの支えになるほうが自分の適性に見合うと
栞子自身が自分のやりたいことを抑圧して
過ごしていたことが明らかになります。
ここまでをまとめると、
■過去の出来事がきっかけで、
自分のやりたいことを我慢して生きてきた
■「鍵」によって、その過去の出来事から
解き放たれてスクールアイドルとなる
という共通項をミアと栞子に見出せます。
3. 自由を叫ぶ翠いカナリア
栞子とミアの二人には、
「過去の出来事ゆえに自分のやりたいことを
封じて生きてきたが、同好会(の一員)によって
その過去と決別してスクールアイドルになる」
という共通点があったわけです。
さて、今一度ミアの楽曲を見てみましょう。
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ミアが手を掛けようとしていたのは、
青い鳥がいた鳥籠なのでした。
そしてその鳥は、籠から抜け出して、
ミアを横切るのでした。
青い鳥、そして鳥籠からの脱出。
そう、あの曲が想起できるでしょう。
三船栞子「翠いカナリア」
「翠いカナリア」のステージには、
背後に大きな鳥籠が配置されています。
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そして、先ほどの「EMOTION」の中でも
この「翠いカナリア」の衣装を身にまとった
栞子の姿を発見することができます。
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髪飾りに注目してみると、
籠の中の鳥がデザインされていることにも
気づけるでしょう。
そして、以下の歌詞にも注目です。
これ以上我慢なんかできないよ 聞き分け良い子だった自分にさよなら
もう恐れない この手で必ず掴んでみせる 本当の自由
我慢することをやめ、過去の自分の姿と決別し、
「本当の自由」を掴むことを歌い上げます。
自身をカナリアに仮託し、鳥籠という枠の中から
脱して羽ばたき、自由を叫ぶのです。
これはアニガサキ版の栞子にも、そしてミアにも
通じる姿勢なのではないでしょうか。
思えば、「EMOTION」のステージに舞うのは
緑色の蝶であるはずなのに、冒頭の本の場面では
青い鳥の羽根が描かれていました。
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この羽根はたしかに「ラブライブ!」シリーズの
伝統芸であると言うこともできるでしょうが、
今回はこのミアのMVに出現した鳥の羽根と
同一視することも可能だろうと思います。
つまり、ミアを暗闇の中のドアに導き、
スクールアイドルへの最初の扉-Prima Porta-に
招き入れたのは、三船栞子であるところの
「翠いカナリア」であったのでした。
4. おわりに
舞う青い羽根と同じか、それ以上に
「10話が合宿回になる」というのは、
「ラブライブ!」シリーズのお家芸です。
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「ん? 後ろにあるのは赤レンガ倉庫?」
そう感じたワタクシ、考えるより即行動。
行ってきました横浜!みなとみらい!
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放送前の回の聖地巡礼とは……。
これまた来週がいっそう楽しみです!