ちょっと珍しい資金調達 その①【当座貸越】
あなたの会社の売上(売掛金)は、いつ現金化できますか?
飲食店など、その場で現金払いを受ける業種。
掛けにしていて、翌月末に支払いを受ける業種。
翌月末にようやく、手形を受け取る業種。
会社が商品やサービスを提供するためには、
仕入や人件費など様々な諸経費がかかります。
そして、商品・サービスを提供して初めて、
売上金を受け取ることができます。
今回は
売上金を受け取るまでに、
会社が先払いで負担している資金。
所謂、運転資金について説明します。
そして、借入の方法である、
当座貸越をご案内します!
こちらを読んでいただくことで、
当座貸越を活用するメリット。
注意すべき点。
がわかります!
それでは、早速いきましょう!
運転資金(仕入から販売まで)
例えば、卸売業でしたら、
各担当者が週に1回~2回得意先を訪問して、
得意先の要望に応じて、タイムリーに、
各種商品をお届け、販売します。
そのたびに、売上金を受け取るのは手間なので、
代わりに、納品書を発行します。
商品を仕入れ、商品代金を払ってから、
検品し、倉庫に格納し、
ようやく注文を受け、商品が売れました。
ここでは、まだ売上金をもらえていません。
が、あなたの会社では既に、
仕入代金、人件費、各種経費を
前もって負担しています。
運転資金(販売から回収まで)
月末など締め日を迎えると、
納品書をまとめて、請求書を発行します。
請求書の期日は、発行日から更に1ヶ月程度でしょうか。
請求書の期日迄に得意先が振込をしてくれることで、
売上金の回収完了となります。
さて、どうでしょうか。
売上金の回収まで、
思いのほか、長い時間がかかっていませんか?
思いのほか、前もって資金負担がありませんか?
この前もって生じる資金負担のことを
運転資金と呼びます。
こちらでは、実際の業務の流れから
運転資金について説明しましたが、
以下の記事では、
運転資金の量を
決算書から読み解く方法も説明しています。
資金調達の方法
資金調達の方法はいくつかあります。
証書貸付(借入期間5年や7年、毎月返済)
手形貸付(借入期間半年や1年、期日一括返済)
手形割引(借入期間数か月、手形の期日まで)
当座貸越
上記は一例ですが、
最も一般的なのは証書貸付でしょうか。
今回は、
運転資金の調達に有効な
4. 当座貸越
について、ご案内します。
このように感じたとしたら、
すごく勘が良いですね!
当座貸越はもともと、
手形を切っていた当座預金が支払不能にならないように、
定期預金などを担保にとって、
当座預金がマイナス残高になることを
金融機関が認めることで、
融資をしていました。(今もしています)
現在、金融機関が推進している当座貸越では、
当座預金を保有する必要はありません。
借入の枠を設定し(例えば上限5,000万円の枠)、
必要な時に、金融機関の伝票を持ち込むことで、
普通預金口座に即座に入金になります。
(その際に稟議はありません)
所謂、カードローンのような仕組みになっています。
当座貸越の活用方法は?
当座貸越を活用するメリットは
なんといっても、スピードが早いことです。
一般的な融資の稟議では、
短くても2週間、長ければ1ヶ月以上かかることもあるでしょう。
これでは、好機を逃してしまうこともありそうですね。
当座貸越では、次のような活用方法が考えられます。
①突発的な需要に備えることができます。
急激なドル高になったり、原油高になったりと
値段の変化に関するニュースが増えています。
経営者であれば、
安く買って、高く売りたいですよね。
安いうちに仕入れたいのに、資金がない。
これでは、タイミングを逃してしまいます。
→当座貸越の枠を設定しておくと、
必要な時に資金調達でき、好機を逃しません。
②「利益が出るから、決算対策を」と税理士に言われたが、お金がない。
→当座貸越の枠を設定しておくと、
必要な時に資金調達でき、
決算賞与や短期前払費用などの
決済に充てることができます。
③既に借りている長期借入金を借り換える。
→既に借りている借入金が
運転資金的意義があると、
金融機関に判断してもらえば、
当座貸越に切り替えることも可能です。
→毎月の返済がなくなって、
資金繰りに余裕を持つことができます。
当座貸越の審査は厳しい?
上記、資金調達の方法で挙げた4つの方法を審査の通りやすい順に並べてみます。
①手形割引 (理由:手形が担保になるから)
②手形貸付 (理由:借入期間が短く業績を予想しやすい)
③証書貸付 (理由:借入期間が長く、業績を予想しづらい)
④当座貸越 (理由:後述します!)
なんと、一番審査の通りづらい借入をご案内してしまいました!
ですが、会計事務所に勤務していて、
「当座貸越が利用できたら、社長の資金繰り負担が減るのに」
と感じる会社もあります。
資金繰り負担とは、
資金調達にかける労力、時間、
思うようにいかないストレスなど、
幅広くあると考えます。
そんな会社にも
この資金調達方法が行き届くように、
ご案内します!
一般的に、証書貸付や手形貸付は、
借入の度に、稟議書を書いて、決裁をとり、
融資したお金の使いみち(振込先)までチェックします。
これに対して、当座貸越は
年に1度の稟議で、5,000万円などの枠を設定し、
1年間にわたって、5,000万円の範囲で好きに借りたり、返したりできる。
5,000万円の入った財布を借りるようなものです。
資金使途については借入用紙に記入したり、
借入枠設定時の契約書に記載があったりと、きちんと定められています。
しかし、借りるたびに使い道をチェックすることは困難です。
そんな理由もあり、
当座貸越の審査は一般的な融資より厳しくなっています。
当座貸越の条件は?
一般的には、以下の条件が必要であると考えられます。
①運転資金が必要であると認められること。
②売上金が借入金融機関の口座に入金されること。
③赤字とならないこと。
更には、「コベナンツ」といって、
借入枠の設定に、一定の条件を約束させられることもあります。
こちらの約束を守れない場合、
金融機関側から、借入枠の閉鎖を求められることもあります。
(コベナンツの一例)
①2期連続赤字としないこと。
②売掛金や在庫量が一定水準を下回らないこと。
当座貸越の費用は?
当座貸越では、借入期間が1ヶ月など短い期間での借入ができます。
借入期間が短い分、表面金利(%)は低くなります。
しかし、ここで注意が必要です。
当座貸越は毎月返済を必要としませんので、
(毎月返済を求められる場合もあります)
借入残高が減りません。
毎月返済がなく、
意識的に返済しないと、借入5,000万円を使いっぱなしになってしまいます。
使いっぱなしですと、借入期間も長くなります。
表面金利が低くても、
借入残高が減らず、借入期間が長くなると、
金利負担が大きくなってしまう場合がありますので、
利用の仕方には注意が必要です。
更には、上記「コベナンツ」の調査費用、借入枠の設定費用として、
毎年、枠の何%かの手数料が必要になる金融機関もあります。
当座貸越は保証協会でも使えるの?
保証協会でも、当座貸越に保証を付ける制度があります。
プロパーで断られても、保証協会付で利用できる可能性がありますので、
金融機関担当者に相談してみてください。
まとめ
運転資金。売上金を受け取るまでに、会社が先払いで負担している資金。
カードローンの様に使える当座貸越。
値動きが激しい時代。仕入の好機を逃さない!
融資審査が厳しく、一定の条件が設けられることも。
表面金利が低い罠に注意!借入期間、借入残高、戦略的に。