諸国民の富 資本にかかる税
|また(2)資材は,課税される国から移動するだろうからである|
第二に,土地は移動しえない物件であるが,資財はたやすくそうしうる.土地の所有者は,必然的に,自分の所有地が存在する特定国の市民である.資財の所有者となると,実は世界市民なのであって,必ずしもある特定国からはなれぬというわけのものではない.かれはやもすると,耐えがたい租税を賦課されるためにわずらわしい調査にさらされていた国を見捨ててしまい,自分の事業を営むにせよ財産を享受するにせよ,もっと気がるにやれるようなどこか他の国へ,自分の資財を移動するであろう.かれが自分の資財を移動すれば,かれはそれが自分の立ち去った国で維持していたすべての産業活動を停止させてしまうであろう.資財が土地を耕作し,資財が労働を雇用するのである.特定国から資財を駆逐する傾向をもつ租税は,主権者と社会との双方にとっての収入のあらゆる源泉をそれだけ枯渇させる傾向をもつであろう.この移動のために,資財の利潤ばかりか,土地の地代や労働の賃金までもが,必然的に多少とも減少するだろうからである.
シンガポールなどはうまく税金を引き下げて富裕層を誘致している.
日本は高所得になると半分も税金を取られるが,シンガポールの所得における最高税率は22%である.また株式なども長期保有すれば無税である.日本からも富裕層がそういった国々へ流出している.シンガポールほど下げるべきだとは言わないが,上げすぎて流出するのは本末転倒である.